□始まりは憎悪の林檎
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ある大きな木に頭がひとつ吊されていました。
ブラリと吊されたそれは、虚ろに地面を見つめています。

にょろりにょろり。
そこにヘビがやってきて尋ねました。

『君はどうしてそんなところに吊されているんだい?』

頭は答えました。

『それは、神が、ワタシを創造するを止めたからだよ』
『神が、?』
『嗚呼、神は二人を愛しすぎた。それ以上を、それ以外を、望まなくなってしまったのだ』

神はワタシを切り捨てた。彼らだけの世界を守るために。
そう続けて呟く頭は、顔を真っ赤にさせていました。それが怒りによるものだとは、ヘビにも、頭にもわかってはいませんでした。

『嗚呼、嗚呼。なんてことだ。この言葉で表せられないコレは一体なんなのだろう!二人を、神を、どうにかしてしまいたい!』

ヘビは半ば叫ぶように言いました。それを見た頭はニヤリと笑うと、


『それならヘビよ。あなたにお願いしたいことがある。どうか二人のうちのどちらかをここへ連れて来てはくれないか』


ヘビには頭が何をしたいのかわかりませんでした。けれど、頭には何か考えがあるのだろうと納得し、

『わかった。ワタシがどちらかを唆し、必ず連れてこよう』



すると頭は、裏に抱える憎悪を微塵も感じさせない爽やかな微笑みを浮かべました。



不覚にもヘビは、その笑みを“美味しそう”と感じたのです。









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