□マイクラス
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あと三日で終業式、そして夏休みだ。
気分は最高潮に浮かれ、正直授業なんか上の空だ。

三時間目が終了し、一斉に下敷きをうちわ代わりにバタバタと腕を動かし扇ぎ出す。エアコンの整備らしく、今日一日使えないらしい。夏休み前というこの時期に、冷房がないのはツラい。
ふと目に留まったのは、暑いなか無表情で本を読む鈴木だった。普段ほぼ学校に来ていない鈴木が何故、今日に限って学校に来たのだろう。

休み時間も半ば過ぎ、早々と食べ終えた弁当箱を片づけ、席を立つ。俺は彼女の席へ向かった。

「なぁ、早弁しないと弁当腐るぜ」

話題がないとはいえ、この話しかけ方はまずかっただろうか。考えてみれば初めてまともに話すかもしれない。(しかしまともな話しかけ方ではなかった。)鈴木は本を読む手を止め、俺を見てこう言った。

「……そうね、この暑さなら死体だって腐るもの」

口元には笑みを浮かべていた。なんて斬新な返答だろう。俺は面喰らった。

「フフ、冗談よ。でも今日は食欲が無くてお弁当持って来てないの。折角だから飲み物でも買ってくるわ」

そう言って席を立ち、鈴木は自販機へと行ってしまった。
俺にはどうしても、彼女の言葉が冗談としては聞こえなかった。





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