□思う壺
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犬が私を見つめている。
ジロリと睨むように眼を向けているそれは、なんとも陰湿である。



「陰湿な犬とは僕のことかい?」
「あらやだ、自覚あったのね、犬飼くん」
「猫山さんはいつも喧嘩腰だね、兄弟相手だってそうだ」

ぴくり、とこめかみに青筋をたてる。何故貴方が私の兄弟仲を知っているのかしら、ねぇ犬飼くん?

「ストーカー行為はいい加減止めて」
「何故さ」
「気持ち悪いからよ」
「万更でもないくせに、」
「よく言う」
「僕の気持ちを、受け取ってはくれないのかい?」
「残念。私は貴方のこと嫌いなの」
「それは君が僕のことを知らないからさ」
「は、?」

それだけ言うと、犬飼くんは去っていった。
確かに私は彼を知らない。彼は何故私を好きなのだろう。彼は何故、私を知っているのだろう。彼は何故、何故――


「彼だけが私を知っているのはフェアじゃないわ」


誰に聞かれたわけでもなくそう言い訳をした。












猫が僕を見つめている。
ジロリと睨むように眼を向けているそれは、なんとも愛らしい。

どうか、彼女が僕を知って、好きになってくれますよう











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