再会
□耐え難い心の傷
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グリフォンの大きな頭をそっと撫でると、気持ちよさそうに目を細めその場に座る
動物を飼ったことも、鳥類を触ったこともないのだが...
人懐っこい動物なのだろう
そう思い暫く撫でてやると、大きな羽の下に口ばしを入れ、顔をこちらへ向けた、その口ばしには先ほどまでは無かったモノが咥えられていて、メルが片手を差し出すとその上に桃のような果物が口ばしから渡された...
これは、食べろということなのだろうか...
グリフォンの体温で生温くなった果物、食えと言っているような目を向けるグリフォン、それを交互に見て、少し考えた後に一口かじった
「...マズ...」
吐き出そうとしたが、グリフォンの口ばしが強めにメルの額を小突いた
ゴクリ_とその何とも言えない果物を飲み込んでしまったが、ソレよりも額が...
「...痛い...」
額をさすり、グリフォンを見上げると、彼は大きな翼を広げて数回羽ばたくと獣の足で地面を蹴り突風をおこしそのまま空へ舞い上がった
手に持っていた果物の残りは地面へ落ちて転がってゆく
メルは空を見上げ既にいなくなったグリフォンを目で探したが夜の視界ではあの黒いグリフォンを探すのは困難だろうと視線を地面へ下ろした
そこには先ほどの果物が転がっていて、月明かりにその模様が浮かび上がる
どこかで見たことのある柄...
渦巻き模様...
「ここにいたのか...」
どれほど怒鳴ってやろうと思ったか...
だが、森でたたずんでいる彼女を見つけて、怒りよりも安堵の笑みがはみ出る様に浮かんでしまい、彼女を怒鳴ることなどできなかった
「帰るぞ」
そう言うが、俺と視線を合わせようとしない彼女
その視線は地面に下ろされている
同じ方向を見て、俺は言葉を失い息を呑んだまま唖然とそれを見た後、彼女へと視線をゆっくりと動かした...
「食った...のか?」
「...はい、一口だけ」
彼女の何も考えていないような、まったく落ち着き払った顔と声がそう言って、驚き顔は見る見るうちに青ざめた
「おっお前!!!これが何かわかってんのか!?」
彼女の細い肩を掴み、向かい合うようにさせて強制的に視線を合わせるが、彼女は遠くを見る猫のような表情のままでボーっと俺の目を見返す
「確か、何かを得られるモノでしたね」
「馬鹿野郎!これ食ったら海に嫌われて、一生カナヅチになるんだぞ!!!!」
「...そうですか、では、問題はありません、もともとカナヅチなので」
「そーゆー事じゃねぇだろ!お前...海が好きなんじゃねぇのかよ...」
なぜこの人はこんなにも悲しそうに怒っているのだろうか
私の事なのに、こんなにも必死になって訴える彼...
「嫌われるのは慣れています...」
そう言いながらワンピースのポケットから飴玉を出してエースに差し出した
「は...?」
「特別に桃味ですよ」
そう言って彼女はエースの口に飴をほおり込み、自分の口にもピンク色の飴を含んだ
何事もなかったかのように彼女は宿屋の方向へ歩み始める
エースは飴を奥歯で砕き、怒りにも似た感情が沸々と湧き上がるのを必死に落ち着かせる
暗闇に彼女の白いワンピースが揺れた...
彼女が悪魔の実を食べたことに怒っているのではない
俺の話を流すように聞いたことに怒っているわけでもない
彼女が...
俺にも言った気がしたから...
貴方も、私の事を嫌いでしょう?_____