再会
□夢のような現実
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ローは暫く前にコーヒーを飲み終え出て行き、部屋にはエースとメルだけになっていた
彼女の寝顔はまるで水彩画から抜け出たような、儚げな美しさを思わせる...
何時間でも眺めていられそうだ...
優しいぬくもりが胸の内に広がって、フッ_と笑みをこぼしてしまう
彼女の白い頬にそっと触れて、たった今まで見ているだけで満足していた気持ちが、彼女に触れたことで物足りなさを訴える
彼女の声を聞きたい...
素っ気なく飾り気もない口調だが_____
『エースさん』
彼女が俺を呼ぶときのあの上目遣いを思い出してしまって...
「メル...いつ目を覚ましてくれんだよ...」
俺の気持ちは、いつの間にか“家族”だということを忘れてしまって、やはり彼女を一人の“特別な存在”として瞳に映してしまっていた
目を覚ました彼女に、俺はもう一度...伝えよう...
それでも拒絶されたなら、俺は...
「.........」
どうするんだろうか、とりあえず酒を飲んで、がむしゃらに食って、兄弟に優しい言葉を強要して...
それで...どうせまたメルを見て
恋に落ちる......
「...忙しそうですね、表情が」
「っ!?ぁ...」
いつの間にか俺の視線は彼女から外れてベッドのシーツに下ろされていた、突然の声に驚いて顔を持ち上げるといつもの不愛想な無表情が俺を真っすぐに見つめていた
どうやら感情のままに表情が変わっていたらしく、恥ずかしさに俺はポーカーフェイスを作ろうと顔の筋肉を引き締めた
「帰りましょう」
溜息と共に吐き出されたような言葉、ベッドから起きあがる彼女は頭が重いというように片手を額に添えながらベッドから降りようとしている
「大丈夫なのか?」
幻覚を見ていた時の記憶はすっかり忘れている彼女に、俺はどう声を掛ければいいのかわからず体調の心配をしたが、彼女は額に当てていた手を降ろして、えぇ_と短く返事を返しただけだった
ローに見せていたあの緩み切った表情がまた脳内で再生されて、ベッドから離れようとする彼女の腕を掴んで引き留めてしまった
「...なにか?」
好きだと伝えなければ...
俺は家族のままは嫌だと...
でも_____
いざ言おうとしたら言葉がまとまらなくなってしまって、彼女の華奢な腕を掴んで見つめあったまま俺は自分の目の奥がチカチカと点滅する錯覚に陥って
余計に緊張が沸き起こるのを感じる
「...俺...は... 「もう...家族は嫌です」
彼が私を嫌ってしまっていたとしても、もう...気が付いてしまった
私は、エースさんの事が好き
「は...?」
「これを恋だと言わずになんといえばいいのでしょうか?」
表情を一つも変えずに彼女は冷静な声でそう言った
なんてわかりにくくて、彼女らしい言葉なんだろうか
「好きだ______」
口を開くと、勝手に言葉が出ていた
彼女の腕から手を離し、俺は自分の言ったことにカッと顔が熱くなるのを感じた
「私もです、さぁ...帰りましょう、モビーに...」
やんわりと、まるで木漏れ日のような笑みを浮かべ彼女が微笑んで、俺の手を握り軽く引き寄せられる
また目の奥がチカチカと点滅している気がする
これが、夢ではありませんように...