再熱

□その8
3ページ/3ページ




「…雨やまないね_」

穂乃美の言葉に返事をせずに跡部は穂乃美の頭に頬をひっつけるようにして離れようとしない

フゥ-_と小さく息を吐いて瞳を閉じる穂乃美


「跡部…そろそろ離れなさい…」

「っ…」

更に力が入る跡部の腕_穂乃美は表情を曇らせて、跡部の胸を押してみるがビクともしない


「…;よし、わかった。んじゃこのまま座ろう!ソファーに!疲れるし!」

「・・・・」


グイッ_と肩を抱かれて持ち上げられて、そのままソファーへ座る跡部

自然と膝を折り曲げソファーに乗せて_跡部の膝に跨るようにして座らされる

その間も跡部が顔を見るなと言わんばかりに、穂乃美の頭の上から顔を離そうとしない、座った後も頭を片手で固定され_
跡部の胸に頬を押し付けるようにして抱きしめられる

「・・・・;」

ほんと、マジいつまで続くのコレ

諦めて寝ようかな_と瞳を閉じて体の力を抜く穂乃美_


「…跡部・・・寝てもいい?」

「寝るな…」

「…んじゃどうすんの…ちょっと暇になってきたよ?そろそろぉ〜」

「・・・・よ―しよーし」

そう言って先日教えたように頭を撫でてくれる跡部

「馬鹿だろお前…」

そう言って緩んだ跡部の腕から顔を上げると、とろけてしまうんじゃないかと思うほどの甘い笑顔が見下ろしていた_

その瞬間_穂乃美の中で何年もしまい込まれていたものが蓋を吹き飛ばして溢れ出た_

それは紛れもなく
 
   恋という切ない感情だ__________

目を見開いて跡部を見つめていると、跡部が優しい声でフッ_と笑って_


「お前を…俺の一番にしてやるよ_」

「…………」


心のこもった口づけを落とされて_
自然と閉じる瞳_





「………っだから長いっ!!パッと離せって前にも言ったでしょうが///」


穂乃美は俺の顔を両手で押しのけると以前も言った言葉を言った_
心が温かくなってくるのを感じる_


嬉しかったんだ_

本当の気持ちを少しでも話してくれたことが_

一度泣きだせば泣き止まないほどにストレスをため込むような奴が_
毎日毎日平気そうにヘラヘラ笑顔を作って_

屋上で煙草を吸っているときに見せた穂乃美の切なげな表情がホントの顔だと分かってからは、笑顔が不自然に見えて_____

だから_今心の底から嬉しい____



「私はっ…一番なんか作らないからな!」

手を下ろして、赤い顔のまま口を尖らせてそっぽを向く穂乃美、跡部はまた頭を撫でてやりながら、フッ_と笑みを浮かべた後真剣な表情を作りその横顔を見つめる


「な、なに?」


恥ずかしいような気詰まりのような思いで跡部の視線に目だけを動かして答えると、その真面目くさった顔で、それでもいい_そう答えられた


「は…?」

「一番にしなくてもいい…テメェが他の男にデレデレしてたらそいつよりいい男になってやる_連れていかれそうになったら、全力で奪い返してやる_俺は、俺の好きなやり方で、お前を一番に愛してやる」

「…………」


驚いて言葉も出ない_何か言いたいが唇はピクピクと痙攣するだけで、知らぬ間に顔は跡部と向かい合っていて視線が外せない_

頭と背中に回された跡部の両手のひらが妙に熱いし、心臓は外に出てきてるんじゃないかと思うほどに煩く鳴っている_

やっとでた言葉は_

「っ…かっ勝手にすれば///」

と可愛くもないセリフだけだった_

「言われなくても勝手にさせてもらうぜ…」

そう言ってまたキスをされそうになり、跡部の胸に顔を埋めてそれを回避すると、フッ_と短い鼻笑いが聞こえ、頭をポンポンとなでられた


ガサガサ_


「…何やってんの?」


頭上から聞こえる袋の開く音、顔を上げるとイチゴチョコを頬張る跡部_


「…おいしい?」

「ん。お前も食うか?ほら、あーん」

「・・・・」


アムッ_と一口でイチゴチョコを頬張ってムグムグ食べる_
甘いチョコと酸味の効いたみずみずしいイチゴで口の中が美味しい・・・


「他のやつにはあげてねぇだろうな…」

「…うん(上げるとしても、お前には言わないよ?)」
絶対阻止されそうだし_

「…そうか、可愛いじゃねぇか」

えらそうにそう言うが満面の笑みで言われても迫力の欠片もない、穂乃美はハハッ_と笑って跡部の胸に額をつけもたれた_


(あぁ…ごめんな跡部_ソレ_片付けの時間削ったら調理時間10分くらいなんだよ_)


そう思いながら横目に見えるお菓子の山_

気が付かれない程度のため息が出た_


一番好き、一番愛してる_

そんな言葉何の心の支えにもならない_

そのうち厭きられるんだ_


だから…


「…やっぱ彼氏最低三人は欲しいよねぇ…ストック的な?」

「テメェ_俺様の話ちゃんと聞いてたか?あ?」

俯いていた顔を跡部の両手で左右からサンドイッチのように挟まれ上を向かされる


「ムッ?……;ごめんなヒャぃ…;」

跡部は鬼の形相で、額にはピキピキと青筋の立つ音が聞こえてきそうなほどの血管を浮き上がらせている_穂乃美は思わず誤った

「ごめんなひゃい、じゃねぇだろ、つくずく目の離せねぇ女だなテメェは」

「じゃぁさぁ、目離さなきゃいいじゃん、てか、そろそろ手離ヒてくだヒャぃ;」

モニョモニョと縦になった口を動かして、跡部の両手を掴んで離す穂乃美、もう_と両頬を自分の手でマッサージしながら跡部を見やる

「いいよ、ちゃんと考える…」

「っ…」

「そのかわり…

私を無視したら二度と目が合わないと思え
私が髪切ったの気が付かなくてもそう思え

毎日ギュしてくれないと他の人にしてもらうし

チュウだって毎日して、

後………絶対捨てないって誓え」

「お前…」

「あ?」

「俺の事すげぇ好きだろホントは」

「…///うっ己惚れんな馬鹿ッ///!!!」

「浮気したら承知しねぇからな」

チュッ_と頬にキスをされて、二人の表情に笑みが零れる

「さぁ、どうかな」

「ぜってぇさせねぇ」

「よし、んじゃ私はそろそろ帰ろうかな。」

「待て、テメェ誰かにイチゴチョコ配りに行く気だろ」

「ん?まっさかぁ;」

「俺もついて行く」

「ついてくんな!私はリョウマ君に愛のこもったイチゴチョコあーんしに青学行くんだ!邪魔すんな!たかが跡部の分際で!」

「だから止めるんだろうが‼この盛りのついた雌猫が!」

「誰がメスネコじゃい!」


と、数分言い合いして結局青学には行けず、穂乃美は跡部に監視されながら昼休みを迎え、その後も家に帰るまで監視され続けたとさ。

(トホホ_)










次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ