再会

□愚問
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友人の部屋を後にし、重々しい表情を作るわけでもなく
メルはいつもの感情の無い表情を甲板の向こうに広がる海へと向けた


肌に触れる乾いた潮風、波に揺れる船の上、海の匂い、それに


家族たちの姿...




私は、この場所が好きだ...______













部屋で休むと言っていた彼女は部屋には居らず、船内を探し回って甲板に出てきたら

そこには何処か清々し気に甲板の縁にもたれて海を見据えるメルがいた...



その姿が、不安にさせる...

彼女がまた...俺の目の届かない何処かへと行ってしまうんじゃないか...



「メルっ?」



掠れた声でやっと名を呼んで、メルの瞳に俺が映る

そのまま“さよなら”と言われる気がして、彼女の唇が動く前に、くびれた彼女の胴あたりを横から引き寄せて抱きしめた




「...勝手に何処かへ行ったりしませんよ」



俺の不安が伝わったのか、向き合い、まるで小さな子供をあやす様に彼女の手が背中に回されて、トントンと叩かれる


素直に“約束だ”と言えればいいのだが、図星をつかれて急に恥ずかしくなり
抱き寄せた身体を離して背を向けた


真っ赤になっているであろう自身の顔を隠すには背を向けるしかなく
エースは咳払いを一度し、おう_と返事を返した




「何か用があったんじゃ?」




メルの冷めた口調でエースの火照りも冷めて行くが、その内容と言えば


俺はメルに“好き”と言われたい






振り返って、彼女の丸い瞳と目が合う






聞けるわけねぇだろ...




「い...いや、何でもない」



「そうですか、では...」


俺の目が泳いでいる事にも気が付いているくせに、彼女は何も気にしてない様子でその場から立ち去ろうとする
その背中に何か言って引き止めなければ、俺は今夜眠れる気がしない!


喉のつっかえを押し出すようにして、エースはメルの背中に向かって声を出した







「っつ...好きってちゃんと言ってくれよ!!!!」





「......」







俺、今なんつった?...


波の音がいつもより煩い、エースの声は大声として出ていき、辺りはシンと静まった






刹那 どっと笑い声が海上に沸き上がった


残念ながら目の前のメルの口元は歪みもせず、無表情のまま
耳を塞ぎたくなるほどの笑い声はエースの背後から...



そう、甲板で清掃やら釣りやらをしていた兄弟達の盛大な笑い声だったのだ


「エース!愛してるぜぇ!」

「ちがう、こうだ!大好きだぜエースゥ!」



ヒャハハ!と腹を抱える兄弟達、エースの表情は茹でダコのごとく真っ赤に染まって兄弟達に振り返ると
「ちっげーよ!テメーらじゃなくてっ!だぁーーもぉっ!うるせぇ!」
と炎を上げながら兄弟達を追いかけて行ってしまった









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