再会
□未完成
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何をするわけでもなく酒を飲む白ひげの隣に座り海を眺めた
港の壁へぶつかる波の音が何とも心地よく、眠気が襲い始めたメルは徐に立ち上がると白ひげを見上げた
「街へ行ってきます」
街を歩けば少しは眠気も晴れるだろう、そう思ったが見上げた父の視線は海へと向けられたまま
不思議に思いメルもそちらへと視線を変えた
刹那 轟音と共に船体が強く揺れた
バランスを崩すメルを白ひげの手が支え、苛立ちの混ざったような呆れ声が降ってきた
「やっかいな野郎が来やがった...」
「...」
見えたのはモビー船より少し小さい、それでも巨大と言える黒の海賊船であった
先端には海の神を思わせる彫刻が施され、毒々しい黒の船艦は黄昏時の空を背負い此方へゆっくりと近づいてくる
近づくにつれ、その船からは活気立った船員達の声が何百と聞こえて来る
メルは表情を曇らせる訳でもなく、いつものすまし顔を父へと向けた
めんどくさい#窒ミげの表情はその言葉にピッタリ当てはまる様な苦い表情を浮かべ、ため息を吐きメルを見下ろし目が合った
「メル、ここで待ってな」
今この船で戦えるのは1度も戦場に出たこともないメルか?
それとも二日酔いで大砲の音を聞いただけでダメージをくらっている奴らか?
今戦えるのは白ひげしか居ない
それに、先程の大砲の音で陸に出た連中もそのうち戻ってくるだろう
やれやれ とため息混じりに重い腰を上げようとした白ひげだったがメルがそれを制した...
「違う、私が行くから、ここで待ってて」
「...でけぇこといいやがって」
小さな背中が行手を阻み、彼女の身体がゆっくりと、だが大幅に歩みを進めてゆく
白ひげは笑みを称え元座っていた場所へ腰を下ろした
燃えるような殺気を抱え彼女の瞳が敵船を睨みつけた
右手を空へ掲げるように持ち上げるとゴウ と唸り炎が一瞬にして薙刀の形になった
それは白ひげの持つ薙刀と大きさや形は同じもので、小さな彼女には巨大すぎる武器にも思えた
甲板をタッ と軽い音とともに蹴り空へ舞うと風に炎の薙刀がなびき空気が震えた
それはまるで天を怒らせたと思うほどの劫火音
見下げたそこには私を怯えた瞳で見上げる敵船の船員達
ヒュ と喉が鳴り振り下ろさなければならない右腕を下ろすことができない
私は、誰も傷つけたく無い
痛みを私は知ってるから
「メル!!」
劫火音の響く中、視界の隅、港にエースの姿が見えた
必死に走ってきたのだろう私を見た彼の表情があまりにも不安げに見えて
私は柄にもなく微笑んだ
「私の家族を...虐めないで」
振り下ろした薙刀が船体を真っ二つに切り離し、海上には巨大な水柱の後に炎に海が焼かれ真っ白な水蒸気が煙立つ
先程までの敵戦からの声も砲弾も無くなり静まる海
「メル!っアイツ泳げねぇのに!!!」
馬鹿野郎! 今にも海へと身を投げ出しそうなエースをマルコ達が引き止めた
「エース!迎えに行ってやんな!」
そう言ってエースのストライカーを港近くの海上へ出したのはモビー号の甲板に立つイゾウだった
少し離れた海上にあったはずのモビー号が船に残っていた船員によって、いつの間にか港の側まで来ていたのだ
エースはマルコの手を振りほどき港から高くジャンプしてストライカーに飛び乗った
靄がかり静まる海上でストライカーのエンジン音が唸り、海のさざ波の音が不安を過ぎらせる
港やモビー号で待機する家族達はエースやメルの声を聞き逃すまいと耳を済ませた