不死鳥
□宴
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ワイワイ_ガヤガヤ___
ソコは大勢の人で賑わっていた
酒を飲み、騒いで踊って…
ソレはまさに陽気で自由な海賊の姿だった
これが白髭海賊団_
エドワード・ニューゲートがつくりあげた…家族__
「おぅ、マルコ!随分美しい人を連れてるじゃないか、紹介してはくれないのかね?」
「マルコ隊長!!一緒に呑みましょうよー!!」
「マルコー何処行ってたんだよー!お前もこっち来いよ!!」
アチコチからあがるマルコを呼ぶ声に彼女は彼という存在の必要性を感じ、少しだけ寂しいものを感じていた
マルコが掛けられる声に答えてる間に蘭は周りを見回してみた
そこにはアチラの世界では有り得ない大きさの人や種族すら違う人まで…
服装はもちろん個性豊かで、いろいろだ
でもその誰もが笑顔で、楽しそうで_
その誰もが白髭のマークを背負い、生きている__
蘭は無意識のうちに探していた
キョロキョロと辺りを見回すその姿はまるで迷子の幼子のよう_
それは決してあからさまな仕草では無く、彼女に気付く者はいない
だがフラッと進み出た先で見つけた彼だけはそんな彼女の存在にいち早く気付いた
見上げた先で見つけたのは自分を娘だと呼んでくれたただ1人の人_
「…親父ッ様……………」
自分から見たら小さな小さな彼女_
異世界からたった1人でこの世界にやってきた…
遠慮がちに歩み寄って来た彼女にニヤリと笑を浮かべると有無を言わせず抱き上げた
「…ゥワッ…」
ワタワタと慌てて落ちそうになるのを支えてしっかりと抱いてやる
「やっと出て来やがったか?_ん?」
「………。」
蘭は抱き上げられた事で顔のすぐ傍まで近づく事が出来た
白髭の黄金の瞳が彼女を写し、目元は細められやわく皺を刻んだ
彼女は自分を支えている手に触れてみた
(あたたかい…)
頬に手をのばす…触れられた……
(…嫌悪はない……許してくれてる………)
愛おしげにさらに目元を細め見守っていてくれる
あぁ大丈夫だ、漠然と心にあった不安がゆっくりと消えていく
「……どぉした?
擽ってぇじゃねぇか」
「なんでもないんです。突然ごめんなさい、…親父…様」
「アホンダラァ!!
親に遠慮する奴があるか_
その固っ苦しい喋り方もやめちまえ」
「……………ッん。」
それは周りの喧騒に簡単に掻き消されてしまいそうな程小さな小さな声だったが
彼女のすぐ傍にいた白髭には確かに届いていた
それは小さな小さな肯定の言葉…
「…!…グララララララ!!!」
突如、響いた大きな笑い声_
破顔一笑とはまさにこの事だろう_
さも楽しくて仕方が無いと言うように
それはまるで大気ごと震わせているようで…
こんなに嬉しい日も滅多にねぇなと上機嫌に白髭は笑う
そんな親父の様子に何だ何だと息子たちが顔を上げ、今まで好き勝手騒いでいたのがピタリと止まった
そんな様子に気がついた白髭はここぞとばかりに口角を吊り上げて声を張り上げた
「グララララッ今日からお前らの新しい妹だ!!泣かすんじゃねぇぞ!!」
そんな親父の声に応えるように何十にも重なる濁流のような雄叫びが返される
「「「「「ぅおお"お"お"ーーーーー!!!!!」」」」」
この瞬間アタシは白髭の家族になった___
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