メイド
□もしも...『 短編 』
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夢の中の私は笑顔を張り付けていた
頭の中で繰り返し命令されるがままに笑みを作り上げる...
考えることはない、これは夢なのだから______
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突然、両腕に海楼石をはめられて、騒がしい船の上から引きずり降ろされて数週間ぶりにマリンフォードにある自宅へと押し込まれた
「チッ_」
ふざけるなクソが!_口に出さずに胸で吐き捨てた...
それは何故か_問われるまでもない、目の前には海軍最高権力者であるセンゴク元帥がいるのだから
「メロちゃんがメイドに態々来てくれるのに不在なんてわしが許さん!」
このロリコンじじぃが!_その言葉も胸に秘め、火花が散りそうなほどの視線と視線がぶつかり合う...
「メイドの方!来られたようです!」
慌てたような口ぶりで煩く登場したのはタシギだった、彼女は久々の休暇と、海楼石を付けられ弱る上司をみて少々はしゃいでいるようにも見える
苛立ちに歯を噛みしめたが、タシギの後に続いて、見たことのある女が見とれるほどの喜びをその顔に広げ現れた...
一瞬にして、彼女の唇の柔らかな感覚が蘇り、赤面して硬直した
「本日はよろしくお願いいたします、ご主人様」
例えようのない気分が全身を満たした
彼女に触れてクザンに痛めつけられたことを思い出し、我に返る、それと同時にタシギの興奮気味な声が頭に響いた
「とても可愛い、人形のような顔立ちの方ですね!!」
「うるせぇぞタシギ」
すみません_慌てて誤るタシギに視線を送らず、舌打ちをうつ
その場に居た筈のセンゴク元帥はいつの間にか姿を消していて、数か月もほったらかしにしていた屋敷の埃っぽい空気にまた舌打ちをうった
海楼石さえなければ、こんな面倒な場所からとっとと退散出来るのに...
「ご主人様...それは、海楼石...ですか?」
「あ?...あぁ...」
そうですか_彼女は笑みを浮かべたまま、その白く細い華奢な手を海楼石へと延ばす
なんでもないような仕草だが、それは充分におれの心を震わせた
「海楼石の鍵を預かっていますので...さぞ、苦しかったことでしょう」
この女は何がそんなに楽しいのか...
そう思うのだが、彼女の笑顔を直視出来る事ができない...
ゴクリと唾を飲み込んで、海楼石の枷を外される手もとを見守る...
「いいんですか!?外しても!」
「タシギ...うるせぇ!!」
枷が外され、自由になってやっと新しい葉巻に火をつける
枷を外したら出航だと言ってこの場から居なくなっちゃいますよ!?______
タシギがそうメロにダダ漏れの耳打ちをしたが、メロは笑顔を貼りつけたまま、俺を見上げる
その屈託のない笑顔はやはり眩しくて、目の端に彼女を捉えて、葉巻を味わうふりをした...
「いいえ、ご主人様はどこにも行きません...」
何の根拠があるのか..._だが、彼女の言葉通り、俺はこの家を出ることはもう考えてはいなかった