メイド

□もしも...『 短編 』
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明日は最後の大会課題が発表される日だというのに、眠れる気がしない


頭の中では相変わらず声が、笑え_と命令する...


幸せを浮かべた皮膚の内側には氷のような冷ややかな感情が支配する...


気が付けば砂浜へと到着していた


慣れた潮風の磯の香りがより強く鼻孔を刺激し、月夜に照らされた海が不気味にうねるのが見える...


気味が悪い_


ティアの声が『笑え』と命令する誰かの声に被さるようにして軽蔑の声でそう言う...


「気味が悪い..._」


それを笑顔で言葉にすると、胸の奥底でくすぶっていた黒い汚い感情が喉元まで一気に込み上げて、つま先からスルスル_と体中の体温が上がるような感覚に思わずグッ_とのど元を両手で押さえつけた


笑顔を...


笑顔を作らなければ...


この熱は私から笑顔を奪う...


お願い...


笑顔で居なければ...私は壊れてしまう...


だが、喉にこみ上げた熱はジワリと耳元に上り、瞳の奥まで登ってきた。。。


熱を冷まそうと息を止め笑みを深めてみるが、眉は苦し気に眉間にしわを作り、持ち上げた頬は小さく痙攣した

とても笑顔とは言えない悲痛な表情...


「っ...ハァッ____フックゥウウゥゥゥッ____」


声にならないような押し殺した呻きと共にその場に膝から崩れ、砂浜に額をつけて蹲った




「笑え...笑え_笑え_わらえ..._________」






頭の中の人物は一体誰なのだ...








「わらえ!!!!」














「...わ...らえ__________? 」



自分だった...
何度も、狂うほどにそう命令していたのは...



自分自身だった..._________




「笑え...笑え、わらえ..._____」



もうそれ以外に思いつかない...


自然に動かないこの顔が憎い____


砂浜に蹲ったまま両手を砂へ何度も振り落ろす


笑え_わらえ_


頭の中でもまだ自分が繰り返し言う



「笑え!!!!!!!!」
「泣け!!!!!!!!   

もう...


笑わなくてもいいから... 」



振り下ろそうとした両手を大きなヒンヤリとした手が後ろから伸びてきて掴んだ


一瞬にして体中の熱が引いていき、あぁ_と息を吐いて、フッ_と涙が頬を流れ落ちる


頭の中で私を支配していた声は消えて

もう、いいんだよ_と耳元で低く響く声...



「なぜ...私を...捨てたんですか__クザン様__?」


どうして...?_彼女の泣き顔が振り向いて俺を睨んだ...


「......ティアちゃんは...君の過去を知ってる...」


「.........」


俺の言葉を理解したのかメロの表情がまるで空間に張り付いたかのように停止し、大きな瞳をさらに大きくし俺を見上げる

ハッ_と短く息を吐いてその見開いた瞳を砂浜へ下した


「だから「......」


伸ばしたパシッ_手は乾いた音とともに払われ、彼女の孤独の立ち込めた表情が俺を見上げた


「ありがとうございました..._ 」


その声に感情は感じられない...

「...うん..._ 」

ゆっくりと立ち上がり、少しよろけるようにして背中を向け離れてゆくメロ


追いかけることなどできなかった


ありがとうございました_


彼女の吹っ切れたようなセリフが俺の体をその場に引き留めていた...















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