再会
□それは偽物
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グリフォンの背に乗り海を見下ろした
向かい風が吹き付け目を細め、視界に入る限りの青に目を凝らす
一瞬でも気を許せば簡単に風に飛ばされてしまうだろう...
それでも心が奔馬のように逸る...
急いで下さい...
そう言わずともグリフォンが私が落ちてしまわない限界までの早さで急いでくれているのがわかる...
一時間ほどその調子で空中を飛んでいたが流石のグリフォンも人を乗せての浮遊は疲れるだろう...
適当に休める場所はないかと探していると海面に何か棒状のものが海面から50センチほど突き出ている...
「...少し休みましょう」
海面を指さしその突き出た物の方へと降下してゆくが、残り数メートルで慌てたように翼を大きく羽ばたかせ背後へ後戻りしようとした
メルは振り落とされそうになりながらもグリフォンの背中の羽を強く握るが、突然結界のような半透明のモノがグリフォンとメルを取り囲んだ
グリフォンはパニックになり結界の中で翼を打つがビクともしない
「大丈夫...落ち着いて...」
冷静な声でそう言ってやると徐々にグリフォンの興奮が止まり、メルは囲まれた結界の床へと降りた
半透明の結界のすぐ下には波を立てる海...
そして視線を前方へ移すと先ほどまで海面になかった船が一隻...その外観は潜水艦...
先ほど海面に突き出ていたモノはこの潜水艦の望遠鏡か通気口と言ったところだろうか
只の潜水艦ならばよいが、帆の先には毒々しい海賊旗___
どうしたものかと考えているうちに、潜水艦のドアが開き、デッキ部分へと一人の男が姿を現した
その表情は何か面白いおもちゃでも見つけたかのように片頬を持ち上げる
「グリフォンの肝は薬になる_ 」
「......」
男の言葉に、メルは瞬時に身を屈め足元の結界に片手をついた...
「_?」
「コロナ______ 」
彼女がそう呟いた瞬間、ゴボッ_と沸騰した気泡が破裂するような音がし、次の瞬間...
「逃げて...」
彼女の結界に触れた手からオレンジ色の炎ともマグマとも言えぬもっと別のサラサラとした水のような物がコップ一杯程度の量で流れ落ちる
それは俺の結界を難なく突き破り海へと流れ落ちた
その瞬間、ジュワァ_と真っ白な水蒸気が立ち込めて視界を塞ぎ、海がボコボコと沸騰しだした
鉄で出来た潜水艦は海の熱ですぐにあつくなり始め、何でもかんでも捕獲なんかするもんじゃないな と今更後悔する
「フレア____」
また何か来る_感情のない冷淡な声が何かを囁き、水蒸気の中で耳を塞ぎたくなるほどの爆発音が響いた
「...くまさんはいないのですか?」
「っ!?......何もんだお前...」
いつの間にか背後に立っていた女、アレほどの威嚇を披露したくせに
そいつは怒りなど微塵も感じていないような無表情で俺を見上げ首を傾げた
「...グリフォンさんの飼い主です」
「...わかった、もう手は出さねぇからさっさと能力を止めてくれ船内のクルー達が蒸し焼きになっちまう」
「.........」
俺の言葉に彼女は長いまつ毛の生えた瞳をまだ水蒸気が上がり、沸騰し茹る鍋のような海面へと向け、左手を差し出し手の甲を下にしてグッと手を握った
彼女の行動の後、徐々に消えゆく水蒸気、海水の沸騰もすぐに周りの海水と混ざり冷めてゆき、視界がクリアになった
「ホシホシの実...モデル...太陽...?」
本当に実在したのか...
この世界に数多と存在する悪魔の実、その中で最も最強と謳われるその実を宿す女が目の前に居る事に瞳を見開き焦りのような驚きを隠せない
「貴方のせいでグリフォンさんは暫く戻ってこないでしょう...かわりに私に付き合って下さい」
「......しかたねぇ」
従わなければ実力行使されても面倒だ、ここはこの女の言うとおりにしておいた方が無難だろう
「私はメルと申します」
「俺はトラファルガー・ロー」
「...?ワーテル...という名ではありませんでしたか?」
作中での彼の名は印象に残っていた、不思議に思い問うと、ローは眉間に皺を寄せ疑いの眼差しを私に向けた
彼女は不思議気に呟いたが、その顔のパーツは先ほどからずっと同じ位置に固定されたままで、不気味なほど美しく整う容姿に俺は視線を外すことが出来ない...
「...なぜ......いや、いい、それは俺の忌み名、トラファルガー・ワーテル・D・ロー...」
「忌み名...そうでしたか、ではこのビブルカードを追って下さい、ローさん」
華奢な彼女の白い腕が俺の方へ伸びて、その指先に小さなビブルカードが握られている、それは右側へ引っ張られるようにして僅かに動いていて、目的の者が移動していることを示している
「いいだろう、船内に入れ...」