再会
□それは偽物
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彼女には俺が知人に映っているのだろう...
ローはキッチンへ行きティーポットの中を確認する、彼女の服用した量を考えると薬の効果が抜けきるまで四時間と言ったところか...
彼女の機嫌を損ね、悪魔の実の能力を発揮されてしまえば、抵抗も出来ず海の底へ沈むしかない...
ローはメルの視線を感じながらも部屋のカギを閉めた
「随分探させちまったようだな...」
暫くは彼女の瞳に映る人物を装うのが最善の選択だろう...
ローはメルの横へ椅子を移動させ腰を下ろした
メルはそれに応えるように体をローへと傾けた
先ほどの笑みは消え、彼女に無表情が戻る...
「帰ったら居ないから...昨夜は...すみませんでした...」
「気にするな、俺も気にしてねぇ」
「...私、エースさんと家族は嫌なんです......でも...いつか捨てられるんじゃないかと思うと...怖い」
...エース...?それに、家族って...
まさかこの女は...白ひげ海賊団の船員ってことか?
メルの発言から状況を探るロー、彼女はどうやら、エース...ポートガス・D・エースの女...といったところだろうか
そしてあのビブルカードの先に待ち受けているのはきっとこの男だ...
だとするとマズイ...
「...怖い思いなんかさせるわけねぇ...そうだろ?」
「...今日のエースさんは...なんだか別人のようですね」
彼女の唇が微笑んだ、会話を終わらせてビブルカードの追跡を中止するよう指示を出さなければならないのにここを離れるのが惜しい...
その微笑は、俺に向けられてモノではないのだとわかっているのに...
まるで春の夜のような生温かな空間が手放せない...
「別人に思うか?」
「いいえ...私の大好きなエースさんです」
彼女のセリフにローは僅かに笑みをこぼし席を立った
「俺も、好きだ...」
俺の言葉に彼女の頬が赤く染まる、今のは演技で吐いたセリフなのか...
彼女とは会ってまだ数時間しか経っていないのに...
一歩踏み込めば抜け出せないとわかっているのに、その一歩を踏み出さずにはいられなかった...
「好きだ...だから、俺を見ろ」
席を立つ俺を見上げた彼女も笑みを浮かべたまま立ち上がり、俺の頬に白い手を伸ばし、触れる...
「見てますよ.....」
彼女にこたえる様に腰を曲げて近づける距離...
彼女の瞳がそっと閉じる...
ドゴォン!!!!
残り数センチの距離は、突然の船の揺れで離された
「...ここで居ろ」
「私も行きます」
海底から浮上する船体、廊下に出るとベポが報告に走ってくる
どうやら“本物”のお出ましのようだ...