メイド

□ハートのチョコレート
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焼き魚に味噌汁と焼き海苔に米、何の飾り気もないがそれぞれの香りが食欲をそそる、味噌汁を一口すすり、ボルサリーノはその旨味に満足の息を漏らした


「お口に合いましたか?」


「最高だよぉ」



ボルサリーノの返事に、それはそれは、と頭を下げたとき、食堂のドアが開いた



「人のメイドこき使わないでちょうだいよ」



不機嫌を声に含ませ眉を潜めたグザンがボルサリーノを軽く睨んだが、それに怯むこともなくボルサリーノは笑みを浮かべたまま適当に謝罪した



「おはようございます。ご主人は洋食の方が宜しいでしょうか?」



僅かな気まずさは残っていたが、グザンが席に座りメロへ笑みを送ったことで蟠りのようなものが自然と消滅して行くのを感じる


「俺も同じでいいよ」


ボルサリーノが居なければ彼女を抱きしめてキスをして甘い朝の挨拶を交わせるのに...




厨房へ向かう彼女の背中を見送り、目の前のボルサリーノへまた視線を戻した、焼き魚を頬張るコイツに自慢気に言ってやりたい...


メロちゃんの料理最高でしょ?__と。



昨夜の彼女のセリフを思い出して緩みそうになる表情を堪えながら深呼吸を1つ付いた


「ティアちゃんが負ける訳だねぇ〜こりゃぁ」


緑茶を飲みながら納得したように呟く声に治まった筈の頭痛がぶり返した


「あのねぇ、ずっと言ってることだけどティアちゃんとは何もないからね?」


何を勘違いしているのか、俺とティアが恋仲だったと思い込む輩は少なくはない

ボルサリーノの言葉に、先日ティアがクザンの家に何かを忘れてきたと訪れた夜を思い出してしまった
あの時はメロが心配でそれどころではなかったが、帰ったらまたティアが忘れ物を回収しに訪れるだろうと思うと気分は良いものではない



でも...



メロちゃんが嫉妬するのも悪くはない_





「ご主人、朝食の準備が出来ました」



フッと思い出し笑いのようなものを浮かべるクザンに無表情で無感情な声が降ろされる
気が付くと目の前のテーブルにボルサリーノと同じように朝食が並べられていた

いただきます_そう言って味噌汁に手を伸ばした時、ボルサリーノから「ぉー?」と声が聞こえ顔を持ち上げる

見るとボルサリーノの箸先にバナナの形に切られたニンジンが挟まれていた


「ボルサリーノ様、当たりです」


「あたりぃ?」


味噌汁の具に細工していたのだろう、俺はもう慣れたものだが、当たりを引いたボルサリーノが少々疎ましくも思う

不思議そうに首を傾げた後バナナの形をしたニンジンを口へ運ぶボルサリーノ

メロは一礼した後また厨房へと向かった


「面白い子だねぇ〜」


人とは何かに当選すると景品が何であれ嬉しいものだ、上機嫌に朝食の続きを再開させるボルサリーノから視線を外して味噌汁を一口飲んで久々の彼女の手料理に幸福感が胸に広がる


暫くして厨房から戻った彼女の手からボルサリーノに渡されたものを見るまでは...



「二粒だけですが」


「おぉ〜これは美味しそうだねぇ〜」



「......」


クッキーでもなければビスケットでもない...



「チョコレートです」


まさかの新作に言葉も出ないクザン、かわいらしい小さな袋に二粒のしかもハート形のチョコレート...


「ハート...」


小さく声が漏れてしまったが二人には届かなかったようだ
ボルサリーノはそれを大事そうにポケットへしまうと朝食を再開させた


















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