メイド

□未完成
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青く漆のような色をした海は穏やかな鈍い響きを単調に繰り返す

その狭間に自転車の軋む不快な音が混ざる



キィーコーザザーーーン...キィーコーザァーー......



クシュンッ!...


「あらら、メロちゃん寒い? 」


「いいえ...平気です」


背中から聞こえてきたクシャミにクザンはゆっくりと自転車を止めた
振り返ってメロを視界に入れたが、彼女は相変わらず表情が乏しい
今だって何を考えているのやら...

平気だと言う彼女だが、クザンは海のど真ん中で辺りに足場ができるよう氷を張り、リュックから赤い色のマフラーを取り出して自転車の荷台に座るメロの首に巻いてやった

ホッと吐いた彼女の息が白くなって空気と混ざりあい消えてゆく



「もう少しで島に着くから、そこからは海列車で移動しようね」


「...はい」



彼は何も言わない...

だから私も、聞かない...




私の返事を聞いてまた背中を向け自転車に跨るクザン、氷で固めた義足の左足が自転車のペダルを踏み込んで ギッ_と小さく軋んだ



数ヶ月間、心配しながら帰りを待っていたら連絡もなしに突然帰ってきて
ボロボロの包帯まみれの身体で苦笑いして「ただいま」と言う彼に、私は「おかえりなさい」と出迎えることしか出来なかった


何も聞かないでくれ...


彼の笑みはそう訴えているように思えたから



クザンは海軍を辞めた、私はそれに着いて行くだけ


今はただ、彼を支えられる存在になれればそれでいい







「島には温泉もあるから、ゆっくり湯治もできるしね」




「湯治...そうですね、楽しみです」



海の表面を凍らせながら自転車が進み始める


クザンはまだ





何も語らない...












「雪...?」



今日は寒い、しかし雪が降るほどに寒かったのか
見上げた空からフワリフワリと海や彼や私に落ちてきた

だがそれは海や私に触れても溶けない...




「こりゃぁ...やっかいだな...」




クザンが自転車を進めながら呟いた



「火山灰...?」



メロはログポースの指針に目を落とす、三つの指針のうちの一つがユラユラと不規則に揺れている

これが何を意味するのか、島の崩壊?


そう考えている間に風の向きが変わり火山灰は降り止んだ



急に青空になる空
ふと、胸の裏側がざわりとうずく...


彼を止めなければと勘が呟いた気がした














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