再会
□未完成
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生臭さと何かが焦げた臭いのする白煙が立つ中
エースは右腕で鼻と口を覆い、視界の悪さに目を細めた
そこら中に浮かぶ魂の無くなった塊が海上にプカプカと浮いていて
海水はまだ熱を帯び、そこに生息していた魚までもが動かなくなってその塊と共に海に漂っている
チャプン..._
静寂の中、水の跳ねる音がしてエースは視線をそちらへ向けた
小さな炎の明かりが ポゥ_と煙の向こうで揺れたのが見えた
静かにストライカーで近づくとぼんやりと人影が浮かび恐る恐ると口を開く
「メル...? 」
先程まで船の1部であった残骸の上でメルは座り込み、だらんと垂らした右手から海上に小さな炎を落としていた
炎の塊は赤く燃えたまま海に沈みゆっくりとその色を消し海の中へ消えていく
まるで血が滴り落ちるように ...
チャプン..._
ジュアッ...__
ポコポコポコ___
「...メル 」
エースは視界にハッキリとメルを映したが、かける言葉を失った
深い深い海の底を移したような瞳はコチラに気がつくことなく海面の小さな波を見つめたまま
その体は力を無くしたかのようにぐったりとして、押せば簡単に倒れてしまいそうだ
右手からは炎の雫が一定にゆっくりと落ちては消えてを繰り返す
彼女は今後悔している...
その手で人を殺めたことを...
エースはストライカーの上で立ち尽くし唇を噛んだ
何と声をかければいい?
そう思いながらも彼女が儚く美しく見えてしまって頭の中から言葉が奪われてゆく
「平気ですよ...」
フと透き通った彼女の声がそう言った
知らぬ間に彼女の視線は海から離れてエースを真っ直ぐ見つめ返していた
チャプン..._
また彼女の右手から雫が落ちて、夢から覚めた気分になりながらも1度息を吐き手の届く距離までストライカーで近づいて手を伸ばした
「ひでぇ暴れようだったな...」
「はい、ほんとに...
驚きました...熱くなくて
ほら......」
彼女の手から火が立ちそれは炎となってメルを包むように舞い上がった
「ちっとも熱くない」
炎の中いつもの無表情が目を伏せた
「俺だって熱かぁねぇよ、自慢すんな」
ニッ_と笑って差し出された彼の右手
伏せた目を持ち上げ、メルは胸の底が熱くなった
「私...強くなるから...」
「...バカ、メルはもう充分強いじゃねぇか」
伸ばされていた右手が私の手を掴んで引っ張って、ストライカーに乗せられて
頭を撫でてくれる、私は顔を横に振ってエースの言葉を否定した
「強いよメルは...
たがら好きになったんだ...
他人を思いやれる奴は強ぇんだよ...
大丈夫、メルがバケモンみてぇに強くても、俺たちはメルを遠ざけたりなんかしねぇから」
あぁ...何故だろうか、アナタには全て見透かされていたんだ...
エースの言葉にメルの瞳から涙が零れた
強くなりたい。
強く...
そう思っていた、でも、心の何処かで分かっていた
太陽の悪魔の実
それがどれほどに強大な物なのか
ちっぽけな私にバケモノじみた能力
怖い
自分自身が怖かった...
強くなりたいと思う程に、そのチカラのせいで嫌われてしまうかもしれない
もしかすると...大切な人を傷つけてしまうかもしれない...
だから...家族に...エースに...
能力を見せることが怖かった...
「...ありがとうございます」
そう言って彼女は笑みを浮かべた
だがそれは悲しげな笑みで、エースはこのか弱い人をどうにか守らなければと腕の中の彼女を更に力強く抱きしめた