再熱
□その3
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その頃穂乃美は長太郎の手を引き廊下を進んでいた
「…穂乃美?」
「ん?」
「どこ行く気?学食は反対方向だと思うけど」
(それ先に言えよ…しかもナチュラルに呼び捨て…)
顔面に笑顔を張り付けたままの長太郎が憎い・・・
「あぁっ!もぉっ!だるい!」
そもそも私はこんな笑顔をはべらせた男は苦手だ
笑えば何でも許されるとでも思っているのか
穂乃美は長太郎の手を放して、さも不機嫌な様子を全身で見せつける
「ごめん、女の子に手を引かれて歩くなんてこと初めてだったから」
眩しい笑顔を浮かべて頬を手で掻く仕草をする長太郎を穂乃美は冷たい視線で睨み付ける
こーゆー男の顔を、一度でもいいから怒り顔に変えてみたい・・・
今までの経験ではそれを達成させたことはない
大体の男は笑顔を浮かべて『可愛いからいいよ』とか言って許してくれる
そして半ストーカーと化す。
「…穂乃美、アンタの事好きとかじゃないから、それだけは先に伝えておくわ…」
怒り顔から急に青ざめた顔をして苦笑いで後退る穂乃美
あの時のストーカーは怖かった、一人暮らしのアパートの部屋の前でドアも開けてもいないのに
『君の為に歌を作ったんだ』
と言って頼んでもいないのに部屋の前で歌まで歌ってくれたのだから
その記憶が蘇り背中に冷汗が伝う…
「・・・・?」
「…あー…ごめん、うん、長太郎はあんなことせん、大丈夫…で、学食どこ?」
曇りの残る顔に笑顔を僅かに作り上げ穂乃美は素直に誤った
「ん、じゃぁ案内するよ」
差し出された手を掴み返さず穂乃美はフン_と顔を横に向けて
「子供あつかい?やめて、そーゆうのキライ」
困ったお姫様とはまさにこの事だろう、長太郎は諦めて手を下ろし、学食へと穂乃美を案内することにした
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学食へと到着したがやはりお昼休み、生徒たちがウジャウジャしている
空いている席を探すが見た限りでは見当たらない
「案内ありがと、あとは大丈夫やから」
「え?」
(一緒に食べるんじゃないの?)
長太郎を追い越して穂乃美は鼻歌交じりにその中へと入って行ってしまった
「〜♪さーてと…何食べようかな…あ、カレーライスお願いしまーす!」
数々のおいしそうなメニューからカレーライスを選択し穂乃美は出来上がったそれをさぞ嬉しそうに受け取り空席を探す
基本的に一人は平気だ。
「あ、この席座ってもいいかな?」
一つのテーブルにグループを作っている女子生徒たち、一つ空いた席に滑り込むように座り満面の笑みを浮かべる穂乃美
断れるはずもない。
「どうぞ…;」
「ありがと、いただきまーす♪」
さすが名門校で金持ち学校・・・カレーまでも高級な味がする…
穂乃美は女子生徒たちの視線など気にもせずカレーをパクパクと食べる
女子生徒たちですらその姿が可愛くて見守ってしまうほど・・・
カレーを食べ終え、視界を食堂の中へと移動させる、宍戸と一緒にいる長太郎と目が合い、手を振られたがスルーして、一つの場所に目が留まる
跡部だ_
「・・・・」
あの女・・・一体何なんだ…
目が合って満面の笑みで手を振られたと思えば席を立って
こっちに来ると思って目を逸らしたら長太郎と楽し気に会話して…
しかも長太郎の髪の毛を触って喜んでやがる…
『もっと獣みたいに強引になりなさいよ』
昨日の穂乃美のセリフが頭の中をよぎる…
「・・・・チッ…樺地、これ片づけておけ」
「うす・・・」
跡部は樺地に食べ終えた食器を任せて席を立つ、向かうのはもちろん穂乃美の元だ
「おい、楽しそうじゃねぇか」
「ん?あ、跡部〜長太郎の髪型って無造作すぎると思わへん?」
フフッ_と長太郎の髪をいじりながら無邪気に笑う姿が更にイライラを増幅させる
「どうでもいいだろ、それより、テメェは俺様のものなんだろ?なら俺様の傍にいるのが自然だと思わねぇか?」
穂乃美の顎を片手で持ち上げて、冷ややかな、意地の悪い笑みを口元に浮かべてみせる
「……フッ_フハハハッ!ダメだこりゃ!フッ_ククククッ・・・あー…おかしい・・・」
周りの女子生徒たちは口々に跡部をかっこいいと言っているのに対し、穂乃美は突然笑い出して近くにある椅子を引っ張ってきて
徐にその椅子の上へ立ち上がり跡部を見下ろす
「あーん?何のつもりだ」
皮肉を極めたような冷笑を頬に浮かべ、穂乃美は片手を腰に当て、もう片方で跡部を指さす_
「誰が誰の物だって?口約束なんか何の役にも立たないよ少年!大人ってのはね、ぁ、女ってのはね、コロコロと意見を変えるように出来てんのよ、あの時しっかり私のハートを掴めなかった自分に悔いな、こんな公衆の面前で、女口説いてんじゃねぇよナンパじゃあるまいし!」
まくし立てた後に穂乃美の手が跡部の頬へ伸ばされる
驚いて目を見開く跡部の顔が怒りと、照れを混ぜた表情に変り何か言いたげだが喋らさない_
唇を唇で塞いで_ニヤリと跡部の顔の前で笑みを浮かべる
「モノにしたいと思ったなら、このくらいしてみろよ_少年♪」
穂乃美は石と化した跡部を放置して椅子から飛び降りて颯爽とその場から立ち去る
あードキドキした_
チュウした―よっしゃー可愛かったー
とか思いながら__________