再熱
□その5
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跡部家へ到着し、その豪邸のドアが開けられる
「おかえりなさいませ」
メイドや執事が声を合わせて出迎えてくれるが、同じような光景を昨日も今朝も体験した宮城姉妹は特に驚きもせずにその顔に笑顔を浮かべて跡部についてゆく
「いらっしゃいませ宮城穂乃美様、蘭様、お変わりのないようで…」
「…?あぁ、うん!元気だよ」
「うん…まぁ…ねぇ…」
穂乃美と蘭は見るからに人のよさそうな初老の執事にそう話しかけられて適当に返事を返し二人して顔を合せて『?』と首をかしげる
「いえいえ、無理もありません、お二人がほんの小さな頃にお世話をさせて頂いていただけなので…」
人のよさそうな初老の執事はそう言うと、ホッホッホ_と上品に笑う
「「あーね…」」
その声を合わせるところも変わっていないようで_
と話されるが、そもそも私たちは別世界から来た元は血も繋がっていない友達同士だ。
小さい頃なんか全然知らないし。今のこの宮城という名前の家も、何で生計を立てているのかなんか知りもしなければ、興味も沸かなかった、たった今までは。
「なぁオジサン?私たちの親ってさぁ、なーにしてんの?」
穂乃美の言葉に、オヤオヤ_と笑顔を絶やさず執事は話し始めた
「数々のホテル営業大手株主などなど、言い出せばきりのないほどでございます_
二卵性でお生まれになったお二方は日本でお育てになりたいと奥様からの達ての希望もありまして_
お姉さまの穂乃美様と、妹の蘭様を日本へ残し_
旦那様と奥様は、海外にて今もご活躍されています。」
((へぇ…))
「テメェら自分の親の事も知らねぇのか?」
二人が執事の会話に感心していると、跡部が少々呆れた苦笑いでそう言った
「「うん、興味ないし」」
((見たことないし))
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そうして四人は跡部家の夕食を頂き、今夜の寝床に案内される_が。
「で、何で穂乃美は跡部と消えようとしてるのかな?ちょっと待て!このクソビッチ!」
「グェッ_」
跡部の腕に手を絡ませて向かいの部屋へ入って行こうとする穂乃美の首根っこを捕まえてそれを阻止する蘭、穂乃美は引っ張られた服を片手で整えながらも跡部から離れようとしない
「なんでダメなん?!毎日毎日穂乃美に女の寝顔見て目を覚ませって言うのか!たまにはイケメンの横で寝かせろ!」
「それがビッチだっつってんだろうが!」
「忍足だって蘭と同部屋がいいよな!?」
蘭の横に立つ忍足は急に話を振られて、驚きながらも、あぁ、まぁうん_
「蘭が嫌じゃないんやったら…」
と蘭に視線を送る
「は!?」
「はい、決まり。じゃね!」
蘭が驚いている間に穂乃美は跡部を引っ張って部屋に入って行ってしまった
しっかりとカギを掛けて
「ドア開かねぇし…チッ…」
蘭は不機嫌な表情で忍足に見向きもせず反対側の部屋へと入って行った_
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「あー疲れた。お風呂部屋にあるでしょ?貸して」
穂乃美はポニーテールのゴムを外し髪を下ろす、その姿に跡部は左胸がドキッ_と音を立てたのが自分でもわかった
「あぁ、そこに…」
「そ、借りるね〜レディーファーストレディーファースト♪」
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風呂から出てきた穂乃美は勝手に跡部のバスローブを使い、跡部の反応を窺う
(かわいいねぇ少年♪)
怒る訳でもなく、耳の付け根まで真っ赤にさせて俯く跡部を見てフフッ_と唇をほころばせる
跡部はムッ_と表情を変えてみたが、その赤みは引くことをせず、足早に風呂へと入って行ってしまった。
_と二人とも風呂に入り終わり、穂乃美はベッドの上、跡部は何やら机に向かってノートパソコンを触っている
その後ろ姿を見て、ちょっとかっこいいかも_と思ったのは口には決して出さない。
「パソコンで何してんの?」
「生徒会の資料作成、文化祭が近いからな…」
振り向きもせずにカタカタと作業を続ける跡部、穂乃美の表情が一気に花開いたような笑顔になり、ベッドから降りて跡部の真後ろに立ってパソコンを覗き込む
「…文化祭!う〜ん♪何歌おうかなぁ♪」
「はっ、歌うのか?」
「ダメか?」
「いいや、でも審査があるぜ?」
そう言って椅子に座ったまま、椅子を回転させて跡部が振り向く
穂乃美は小首をまげたままその大きな目で跡部の目を見返すと
跡部は勝ち誇ったような笑みを二ヤリと浮かべて口を開く_
「生徒会会長の、俺様の審査だ_」
「ほぉう…じゃぁ顔パスだな、何歌おうかな?ワールドイズマイン?ぁでもヲタクばれるしなぁ・・・ぁでもいっか!」
「何をブツブツ抜かしてんだ…悪いがカラオケ参加は毎年志願者が多いから、事前にテストがあるからな、頑張れ」
ポスッ_と穂乃美の頭を大きな手のひらが乗せられて、グシャグシャと撫でられる
「やめろばかたれ!」
笑い交じりにそう言ってその手を掴んだらグイッとそのまま引っ張られて跡部の右膝に座る形で落ち着いた
「・・・・やるじゃないか…少年」
(ちょっとドキッとしたわ_)
そう言って体を堅くして俯いた穂乃美
「しおらしい所もあるんじゃねぇか」
見上げると、嬉しくてたまらないといったような優しい笑顔を作っている跡部と目が合う
「あっ!えっと!そうだ!私お菓子もらおうと思ってたんだ!そうだそうだ!」
慌てて視線を逸らせて膝から降りようとしてみたが、知らぬ間に腰へ回されていた腕が絡みついて動けない、うわぁ;_とまた目を合わせると、微笑みを浮かべた跡部の顔が距離を縮める
「お前が誘ったんだろ?」
「っ///」
もう三度目のキスなのに、恥ずかしくて仕方がない_
攻めるのは得意だが受けは苦手だ_
でも___________
(気持ちいいわ…)
ただ唇を合せるだけのキスがこんなにも気持ちのいいものとは思わなかった、自然と溶けるように閉じる瞳_
「………っ長いっ!!!しつこいっ!!!パッと離せばか///」
(危ない;中学生にのまれるところだった)
穂乃美は緩んだ跡部の手からすり抜けて距離をとる
跡部は真っ赤になった穂乃美の顔を見て声を出してハハハッ_と無邪気に笑う_
「っ〜!もう寝る!」
フン!_と顔を背けてベッドへ潜る穂乃美、跡部はまた小さく笑って、おやすみ_と声をかけたがそれに返事は返っては来なかった。