再熱

□その6
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パーカーの両袖から遠慮がちに出た指先に、少し長めのジーンズ_


「んで、これ被れば完璧〜」


ズボッ_と蘭の頭に自分の被っていたニット帽を被せて満面の笑みを浮かべる穂乃美の右肩の露出を直してやりながら、蘭はハァ_とため息を吐いた



「煙草買いに行く感じ?」

「そそ、もうないから、コンビニ行けばあるやろ」


カチャリ_とドアを閉め廊下に出ると鮮明に見えるそのダラシナイ格好と可愛らしい笑顔_


面倒だが、こんな無防備な奴、深夜と言って差し支えない時間に一人で歩かせる訳にはいかない


「ハァー…;わかった、私も久しぶりにコンビニのイチゴミルク飲みたいしな」


最近は高級を気取ったものしか口にしていないせいか、口に出して言ってみると物凄く飲みたくなってきたイチゴミルク_


夜だけあって、メイドや執事の数も少なく、難なく外へ出られた


「「やった!」」


跡部邸の門の外まで出ればこっちのもんだと、二人は声をそろえてハイタッチをした



暫く夜道を歩いていると蘭が小さなあくびを一つして、穂乃美に声をかける_



「てかさぁ…絶対穂乃美煙草売ってもらえねぇと思うんだけど」


蘭は先導を切る穂乃美の背中を見ながら、まぁ、私はイチゴミルクありゃいいわ_と続けてそう言う_


「大丈夫大丈夫♪その為に跡部の家からモンブランパクってきたんやから♪」


「モンブラン…あぁ…でもいるか分かんねぇじゃん」


「「亜久津」」


蘭は疑問気に、穂乃美は笑みを浮かべて声をそろえて言う


「いるから、任せて♪」



そう言うと穂乃美は鼻歌交じりに公園へと続く階段を上り始めた


(コイツエスパーかなんかか;?)

穂乃美の言う通り、ストリートテニス場で亜久津がベンチに座って煙草をふかしているところだった、その横にはテニスラケットが立て掛けられていた


「っあ!穂乃美!?」


「すみませーん!煙草ください!」


いきなり走り出した穂乃美、蘭は慌てて声をかけたがそのまま亜久津の元まで行ってしまった


「あぁ?誰だテメェ…」


亜久津はタバコを手に持ち、案の定眉間にしわを寄せて穂乃美に敵意丸出しだ


「宮城穂乃美、と蘭だよ、もう煙草吸いたくて死にそうお願いします!一本くださいぃっ!」


「…おいおい…;」


手っ取り早く自己紹介をして顔の前で両手を合す穂乃美

「チッ・・・・」

舌打ちをしてタバコを譲ってくれた_




「プハ〜悪魔的だぜ・・・・」

どこかで聞いたことのあるようなセリフを吐いて穂乃美は機嫌よくテニス場から出て、遊具のある方へと向かった


残された蘭はそれから視線を外し、亜久津へと目を向ける


「なんだあのチビは…」

「ごめんな_ずっと我慢してたからアイツ」

「・・・アンタは吸わねぇのか?」


ニヤリと右の口角を上げて煙草のケースを差し出す亜久津、蘭は、いいや_とその差し出された煙草をやんわりと押し返した


「…私は吸わないから_あ、そうだ、モンブラン食べない?」

「は?」

先ほど穂乃美から受け取っていたモンブランの入った箱を顔の横へ持ち上げて微笑んで見せる蘭

眉間のしわをまた作る亜久津に対し、更に笑顔を作って隣へ並ぶ


「これ中々手に入らないやつらしいんだけど…いらない?」


その箱には確かに、ケーキ有名店の名前が書いてる、しかも予約殺到でなかなかお目にかかれないモンブランが入ってるだと_

「………貰ってやってもいいぜ」

「そう、なら後で、5カートン、あの子の為に変わりに買ってきてあげてくれない?煙草…金は渡すからさぁ」

交渉成立だ_

亜久津は少し表情を緩めた

(可愛いわ_亜久津・・・)

フフッ_と笑みを浮かべてその横顔を覗く蘭


「…ンだよ?」

「いいや、好きなんだなぁと思って、モンブランも・・・テニスも…」


亜久津の横に立て掛けられたラケットに目をやり、その後に視線が交わる_


月の光に照らされて、息をのむような美人が、まるで心から楽しいと訴えているかのような笑顔を浮かべている

そうしてそれが今は俺だけに向けられていた_


「ぁ、ねぇライン交換しない?」

「っ…あ、あぁ…」

「じゃ、ここで待ってるから買ってきてやって、モンブランはその後な」

「あぁ…え?…チッ…」


見とれて適当に返事をしてしまい、渋々とテニス場から出る亜久津_

蘭はその後ろ姿を見送って、ケーキの箱をぶら下げたまま穂乃美の居る方へと向かった_






















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