再熱
□その9
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「氷帝の文化祭ってすげぇらしいな」
家に帰ると蘭がベッドでくつろぎながら話し始めた
穂乃美はテラスに足だけ出して煙草を吸いながら蘭の言葉に耳を傾ける
「そうやねん、料理対決とかもあるで!」
興奮気味に忍足が鏡の前に座ってそう言う…
(…まて、いつの間にいたんだそいつ)
穂乃美はハッ_と後ろを振り返ると、忍足と目が合い、ニコニコと手を軽く振ってきた
「…;跡部連れてきてないだろうな;?」
「景ちゃんは穂乃美ちゃんが帰らせたんやろ」
そう言えばそうだった、家の前まで送られて、青学に寄り道しようとしていたのを邪魔されて怒って帰したんだった_
「まぁいいじゃん、んで、料理対決以外は?」
蘭がさほど興味無さそうに話を割り込む、穂乃美の跡部への愚痴よりも、忍足の文化祭の話の方がましだと判断したのだろう
「あぁ、他には各クラスのコスプレ、うちは景ちゃんが執事コスやで」
「よかったじゃん穂乃美、あんたメイドコスでしょ」
「ちっともよかないわ;」
二人に背を向け煙草の煙をため息交じりに出す全く…雨は降り止まないし_
と空を見上げる_背後で続きの会話が始まる
「後は模擬店もあるし、本格的な劇も_あと、氷帝キング対決!投票よろしゅうな蘭」
「へー…キングねぇ…」
蘭はベッドでゴロンと大の字になり、ヘイヘイ_と言葉を続けた、視界の隅で穂乃美の吐き出した煙草の噴煙がユラユラと空に飛んでゆくのを眺めて…
「あんた跡部と付き合ってるの?」
「ヒッ_ななななんで!?つ・つ付き合うとかじゃないし!」
「…ふぅーん…穂乃美がねぇ…まぁどうでもいいや、で?優勝したら何か貰えるの?忍足」
そのまま目を閉じてこの憂鬱な気分の原因を考える_
あぁ…多分雨のせいだ_
「温泉旅行とか、海外旅行やったと思うけど…蘭ちゃん・・・なんかあった?」
忍足は椅子から立ち上がりベッドの方へ向かう、元気のない蘭の返答に不安になったのだろう、忍足がベッドに座る気配がした
「大丈夫、ちょっと疲れただけ_」
目を閉じたまま頬に笑みを浮かべてみたが、あまり効果はなかったようで、忍足が掛ける言葉を探しているのがわかる_
丁度その時パタン_と窓を閉める音がして穂乃美が煙草を吸い終わったのを知らせた
「忍足、気にしなくて大丈夫、そっとしといてあげよ、色々考え事してんだろうよ」
フアァ〜_と大きなあくびをして穂乃美は、ちょっと出かけてくる_と部屋を出て行った
「…やめなさい、忍足君」
目を閉じたままそう言う。
忍足は穂乃美が居なくなったことを良いことに、蘭の顔に顔を近づけている途中だったのだが、バレテしまい、姿勢を元の位置へ戻した
「…何…考えてるん?」
「どうでも良い事…雨やまねぇなぁ、とか、忍足のメガネは度入りなのかなぁ、とか…穂乃美と跡部はいつ別れるのかなぁとか?」
最後にフフッ_と小さな笑いをつけて忍足の方へ身体を向けて横になって、耳の上あたりに手のひらを置いて、肘で頭を支えるようにして、やっと忍足と目を開け視線を合せる
「確かに、どうでも良い事かもなぁそれ…でも嬉しいで、俺の事も考えてくれてて」
「…で?実際どうなの?度入り?無し?」
「かけてみる?」
忍足は蘭のメガネを外し、代わりに自分の丸メガネを蘭へ掛けさせた
「…伊達メガネかよ…なんでまた?」
ヨイショ_と上体を起こして、ベッドに座ってメガネを外し忍足に返す
「目つき悪いから、かな?」
「何だそれ_」
そう言いながら返してもらった自分のメガネをかけ、視界がクリアになった、目の前には丸メガネをメガネ拭きで拭いている裸眼の忍足
「…そっちの方がいいのに…」
「・・・・」
蘭の言葉に忍足は驚いたような顔の後にデレッと照れ笑いを浮かべる
(可愛いなこいつ…)
「私以外の前でメガネ外すの禁止な」
「了解♪」