メイド

□メイドは海が好き
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唇が名残惜しそうに離れる


プールから光が反射して


クザンは眩しくて目を細めた・・・




「ご主人…今…海の中にいるみたいです」



メロがリビングの方へ視線を向ける




浅い海底から上を見上げた時のような

水面模様がきれいに光と陰で出来上がっている


太陽の光がプールに反射し幻想的な空間が出来上がっていた



「メロちゃん…?」


「はい、何でしょうかご主人?」



その表情はまた無≠ノ戻っていた

部屋を見渡すその横顔にキスを落としても変わらず


しまいにはスルリと腕の中から離れてしまった






「メロちゃん…水、好きなの…?」




部屋の中を見回しては行ったり来たり

チョコチョコと動き回る姿が可愛らしいが

物足りない気持ちもある_




クザンは面白くなさそうに頭をかいて聞いてみる


プールサイドの水着の前に立ち止まって


それを拾いあげ、コクリと頷くメロ



「ご主人、待っていてください」



そう言って自分の部屋へ行ってしまった



(メロちゃん…

そりゃぁないでしょ…)


せっかく二人の気持ちが通じ合ったところで

光の反射に邪魔されるとは…




クザンはプールサイドにあるビーチチェアーに身体をまかせた



高い天井でユラユラと光と影が形を変えてゆく



『殺さないで下さい…』



怯えた目でそう言われて、一体何があったのか

あの言葉の理由を聞きたいとも思ったが

きっと忘れたい記憶なのだろう




暫く物思いにふけっていると

足音が聞こえてきた




クザンはビーチチェアーから身を起こし

そちらへ顔を向ける



白い肌を露わにして

淡いピンクのフリルが付いたビキニ水着を来たメロがクザンの前へとやってくる






「ご主人も入りましょう」

(じゃないと入れないんで_)






メイド服に隠れていた体は想像以上に魅力的で

血管の浮くような細い腕や足はすらりと長く

全身がきゅっと小さく

彼女はまるで神様が美しくこしらえた人形のような端整な姿___




「っ…あ…あぁ_」



声を出すのを忘れるほどに見とれてしまい




クザンは喋るというより


喉の奥にある乾いた空気をとりあえず言葉に出してみたという風だった



気が付くと無表情なメロの顔が俺の顔を覗き込んでいた



「ご主人…早くして下さい」



腕に手を絡ませて引っ張るメロ



「あぁっと・・・・

でも、メロちゃん風邪ひいちゃうわ

俺とプール入ったら」



引っ張るその手を、逆に引っ張り返して腰に手を回して引き寄せる


メロのすべすべした背中が触り心地がいい・・・・



「・・・」



「あらら…そんなに見つめないでよ

見ててあげるから」



ご主人はそう言って冷たい唇で耳の手前あたりの頬にキスをする




「っ・・・・・・・・」



「メロちゃん…」




★★★★




「っ…ご主人…?アッ…ッツ…チョッ・・・・ッツ…」



そのキスも一度ならいいが

耳から首・肩や鎖骨にもキスをされてメロは表情こそ変えないが

少し慌てたようにクザンの顔の口元辺りを両手で押し返す




「なに?」

(いい声出てたのに…)



「っ…プール…一緒に入ってくれるなら…続き…してもいいですよ?」








★★★★





となるはずもなく



最初の耳元へのキスだけで終わり


メロの両手で口を塞がれクザンの妄想は叶うこともなかった


目の前にこんなにもいい女がいて、我慢させられるとは…





気が付けばメロはクザンの上着をグイグイと脱がそうとしている



「何してんのメロちゃん」


「一緒に入りたいです…」



「…しかたないね_」




メロを腕の中から開放しクザンは鍛え上げられた上半身を露わにする



ヨイショ_


そう言ってメロを抱き上げて片腕に乗せてプールへと入る____





_________________





「で…いつまでそうやってるのかな?

メロちゃん?」



水面から顔だけ出して、クザンの首に手を回して胸元で見上げるそれはいつもの無表情だが、何かを言いたげでもある



「・・・・泳げないのです」


「………・・・・・・・」



プフッ____



可愛すぎる…


クザンは緩む口を片手で隠して目を細めて

メロの腰を両手で掴み引き上げる



「…なんで入ろうと思ったの?」



顔が同じ高さにならんで、メロの整った顔がジッと俺を見つめる




「水に入るのが…好きなんです

ご主人となら安心です」



やめて、可愛すぎるからメロちゃん





「…じゃ、明日はデートに連れて行ってあげる」



「・・・・はい、ではお弁当を作ります」




クザンはプールの縁まで行き

両肘を縁へかけ暫くメロを首からぶら下げて相手をしてやる


時折バタ足をしてみたりしている…





ふと目に入るメロの白い背中


「・・・・」


そこには戦闘もした事が無い女が作らないであろう古傷が一本

白を強くさせて長く引かれている…



「鞭の傷です…」


視線に気が付いてまたメロはぶら下がってクザンを見上げる


「痛い?」


「いいえ…これは私への罰です、お気になさらないで下さい」



表情一つ変えずにいつもの調子でそう言われて

クザンは眉間に少ししわを寄せた…



「…メロちゃん?もし…何かあれば話す事…いいね?」


「はい」


彼女の口から語られるのを待とう…






「ご主人…」


「ん?」


「明日は…初デートですね」




・・・・君は本当に…可愛い・・・・
















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