メイド

□スモーカー様がいらっしゃいました。
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やはりご主人に何も言わないまま医療棟にきてしまったのは拙かっただろうか_

メイドマニュアルでは、メイドは感染の可能性がある病気になればその日のうちに他のメイドを派遣し、医療を受ける事となっている

その通りの手順で現在に至るのだが、少々淋しさも残る

昨晩ようやくクザンに隠していた過去の話をした所なのに

すぐに帰れると思ったが、約一週間の入院となり、今は個室に入れられベッド上で点滴に繋がれてしまい身動きも取れない

御かげで身体はすっかりといつもの調子なのだが、看護師が言うにはまだ熱があるとか...

これで何本目の点滴だろうか、点滴の袋にはBと書かれている


出来ればご主人に電話の一本でも入れたいのだが...今日は無理そうだ_


時計の針は夕食時の時間をさしており、メロはいつもの無表情で視線をドアへ変えた

ドアの向こう側では時折人の通る気配がして、遠くからは夕食を配膳する音も聞こえてくる

今朝クザンが作ってくれたお粥以外口にしていなかったせいか空腹でそれが待ち遠しくも思える

以前クザンのメイドをしていたというティアは自分と同じほどの身長で、歳も同じくらいだろう

それでいてメイド育成所の顧問を務めているというのだから心配は無用だろう_

そうこう思っていると点滴の最後の一滴がポタリと管の中へ落ちた


「...」


点滴が終わる前には来ていた看護師が今回はまだきていない、管の中身が徐々になくなって行くのを見つめていると、ノックもなしにガチャリ_とドアが開いた______

まず初めに視界に入ったのは紺色のズボン、そして白衣...

あぁ_医者か...

そう思いその医者の顔男見る


「...点滴が終わった頃だと思ってな...」

医者にしては柄の悪い見た目をしている...
顎髭に鋭い目つき、それに随分若い医者だ

堂々とそこに居るが、病室のドアの鍵を後ろ手で閉めたように思えた

「先生、何故...鍵を閉めたのですか?」

見間違えだったなら誤ればいい

そう思い、身体を前かがみにさせ、メロの点滴の針を慣れた手つきで抜いてくれている若い医者に問いかけた

先ほどまで鋭く尖っていた瞳がギョッ_と驚いたように見開いて、針を持ったまま、ベッドの横に立ち、ゆっくりとこちらを見下ろす


「お前、海兵か?」


やるじゃねぇか_そう聞こえてきそうな目つきでフッ_と鼻で笑われた

メロは驚きもせずに無表情のまま口を開く

「私はただのメイドです、メロと申します...」

「メイド?フン...海軍の犬、いや...猫か」

「...海賊さん...ですね?」

海軍本部に潜り込むような人物は海賊ぐらいだろう

メロがそう聞くと、ニセ医者は考えるように顎髭を一度手で撫でて、ギロリと睨みつけてきた

「あぁ、そうだ...ハートの海賊団、名はローだ」

そう言って点滴の針と本体をゴミ箱へと投げ捨てる

残念ながら海賊の事はあまり詳しくはない、メロは、そうですか_と言って、自分の手に丁寧にガーゼとテープを貼ってくれるローを目で追う


「船に積んでた薬と医療器具がそろそろ底をつきそうでな...」

いいわけをするかのようにポツリポツリと言うロー

病室を見渡して何やらソワソワとしている

大方、正体がばれそうになり適当に此処へ逃げ込んできたのだろう

本来なら、海賊に出くわせばすぐに海兵へ知らせるのが義務なのだが、悪いような人物には見えない...


「この部屋を出た目の前の部屋に、ダストシュートがあります」

メロという女は表情をピクリとも変えずに部屋のドアを指さした

「そこから逃げられるという事か?」


俺の問いに女は頷くだけの返事を返した


点滴の薬品は高熱時のモノだったが、他にも病を持っていそうな女を見下ろし、信用するべきかを悩んだ


その時、海軍本部から全館へと警報が鳴らされた

ウー_と響くサイレンに、窓の外にはライトが赤々と灯される

それはこの島に海賊が乗り込んだという知らせであり、その海賊とは間違いなく、ローの事だろう


『医療棟より、ハ―トの海賊団と思しき海賊が現れた、至急捕らえるように!!!!』


館内にも響くアナウンス、窓の外を見ると海兵が続々と医療棟へと終結して来ている


「...有名な海賊さんなのですね」

「まずいな...」

さすがのローも失敗したと表情を歪める、部下たちは先ほど子電伝虫で船に戻ったと連絡があった、きっと自分が戻るのを待っているに違いない


_______________________________



ティアと共にクザンの作ったペペロンチーノを食べていると、緊急要請のサイレンが響き渡った

それとほぼ同時に電伝虫が鳴り、クザンは少々めんどくさそうに席を立った


「夕食時に勘弁してくんないかなぁ...何なの?人がゆっくり晩飯食ってるときに...」


ただでさえメロちゃん不足でイライラしてるっていうのに___

眉間にしわを寄せながら、苛立ちを声にも現して言うが、相手の言葉にクザンの表情は静止し、有無を言わずに慌てて家を飛び出した


医療棟にて侵入者を確認、ハートの海賊団、トラファルガー・ローと思われる人物、奴は変装している模様です
 

よりによって、メロちゃんが入院している時に...


「チッ______」




うちの可愛いメイドになんかあったらどーしてくれるのよ______








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