メイド
□メイドがワカラナイ
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キャベンディッシュの船から無事に元の島へと戻った頃には景色は昼間になっていて、島の街は昨晩よりも賑やかに店々が立ち並んでいる
人の群れを縫うようにしてメロは島の反対側から海軍船の停泊していた港を目指す
途中の甘味屋台を名残惜しそうに見流しながら、到着した港には昨日の場所に海軍の船は停泊しておらず、変わりに5人の海兵が視界に入った
クザンは船に乗り、私を探しに向かってしまったのだろう...
「......」
キャベンディッシュは既に島を出てしまっているし...
私が怒られてしまうのか...?
そうこう考えているうちに5人の内の一人と目が合ってしまった
「お疲れ様です...」
メロは驚くわけでもなく、いつもの無表情のまま頭を下げた
「探しましたよ!クザン大将へすぐ連絡しますね!」
「...はい」
心底ほっとしたような崩れた笑みを浮かべ海兵が電伝虫を取り出した
プルプルプル____
電伝虫の呼び出し音が数回鳴り、ガチャッ!と相手が受話器を持ち上げた音が聞こえた
『何?くだらない事だったら後にしてね?』
舌打ちを交えたような苛立ちの籠った声が電伝虫から聞こえてきて、ヒクリ_と緊張がメロの身体を走る
「お探しのメロさんを見つけました!」
海兵がそう言った後、ご主人は何を言うわけでもなく、またガシャン!という音と共に通話は途切れた
「...と、取り敢えず...ここで船を待ちましょうか」
「はい、ご迷惑をおかけしたようで、申し訳ありません」
クザン大将のメイドはそう言って変わらぬ表情で頭を下げた
昨日と雰囲気が違うのは服装のせいだろう、あまり見ないようにしていたが、随分と細っこい手足だ...
と、彼女の腕に視線が止まった
両腕にくっきりと赤く残る何かの擦り傷、それに両手首には数か所の小さな傷がある、それらは白い彼女の肌には目立つほどだ
「あの...それは?」
「...お気になさらないで下さい」
メイドはそう言うと港近くに並んでいるベンチへと腰を下ろした
遠くを眺めるようにして海の方へ視線を向ける彼女の横顔に見とれない男など居るのだろうか...
それにしても、両腕の傷...
これはロープで縛られて出来る傷...
「ぁ。もしかして、クザン大将に?」
口に出さないつもりだったが、出てしまったようだ、彼女の横顔がこちらに持ちあがって一度目が合い、彼女の視線が自身の白い腕に降り、また持ち上がる
「............えぇ...はい」
「.........」
俺以外の海兵達も心の中での叫びは同じだろう
クザン大将......
気持ちは分からないでもないが、こんなに痛めつける必要はないだろう?
なんて悶々と心の中は荒れ狂う
「クザン様は優しいです」
「そう...ですよね」
無表情で見上げられつい視線を海へと逸らした