メイド
□生殺しって知ってる?
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「...ゥ......」
知らぬ間に彼女の両腕の包帯の上を握っていて、痛みに表情をゆがめたのを見てハッ_と我に返る
怯えたような瞳がまだ俺を見上げている...
「ごめんね...わかった...でも...一発殴るくらいはいいでしょ?」
ご主人の表情が緩み、冗談じみた諦めの微笑みが浮かんだ
「...クザン様がお相手なさるような方ではございません...彼は_______ッ...んンッ...」
クザンの表情に安堵したが、突然手首を引っ張られ唇を強引に奪われた
噛みつくようなキスに息が苦しくなるほどで何度も離れてはキスを落とされて
いつもの優しい口づけとは違い、無心に...強引に奪われる...
唇がやっと離れ、息の上がる私を悲し気な影を作った瞳が見下ろした___
「ごめんね...“彼”の話はしばらく聞きたくない...」
「......」
私は、クザン様を愛している...
なのに...心の片隅で“彼”との幸せだったあの日々が再生されている
もし...彼と再会し、昔の...
出会った頃の優しい彼に戻っていたなら...
私は...___________
私は...どうするというのだろうか______
ご主人の唇が首筋にキスを落とす...
私はそれを...
「ごめんなさい...」
受け入れることが出来ない____
こんな気持ちのままでクザン様に抱かれるなんてできない...
クザンの耳にも届いている筈の震えた声...
だが、クザンはそれを無視してメロの服の下の肌へと手を滑らせる
「ごめんなさい......ごめっ...なさ...」
「......______ 」
彼女の震えた涙声...泣き出したいのは俺の方だ...
彼女を抱き寄せたまま、絶対に手放したりなんかしないと...
そう強く思いながら抱きしめた
「今日は...許してください......」
胸を小さな両手が押して、俺は彼女を解放させる...
切ないやるせなさが今にも心臓を押し潰しそうな痛みを与え、震える歯を噛み締め、願うような思いで彼女の額へとそっと口づけた...
「.........メロちゃん
...俺は...君の事が好きだよ___ 」
細い髪が何本か濡れた頬に絡み付いている
それを後ろ髪へとそっと戻してやりながら親指で彼女の涙を拭ってみたが、彼女が瞬きをすれば、また大粒の涙が同じ場所を濡らした...
この涙は...誰のために流してるんだ...メロ.........
表情に出すまいと堪えてはみたが、苦しげに眉間にシワを寄せ、彼女を映す瞳が動揺して僅かに揺れる
頼むから...君も同じセリフを言ってくれ
「.........ごめんなさい...今は...少し頭を冷やしてきます____ 」
彼女は俺の言葉から逃げる様に船室から出て行った
彼女は俺のメイドで彼女だと...
そう思っていたのに...
クソッ_____
苛立ちとも言えぬ感情が込み上げて、切羽詰まったように表情を歪め額を片手で抱え
後ろの椅子へと力なく腰を下ろした