メイド

□ハートのチョコレート
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朝日を受けて銀を流したように光る海___



メロは早朝の甲板から輝く海を見渡しハーと白い息を吐き出した


目が覚めると隣にご主人が眠っていて、思わず眠るご主人の腕を抱きしめて、筋肉で厚みのあるその腕にキスを落とした

起こしてしまってはいけないと思い、そっとベッドから這い出て今に至るが...


どうも船員達が慌ただしい...


早朝にもかかわらず大勢の船員たちが船の上を忙しそうに行き来している



「何かあったのですか?」


適当に近くにいた海兵に声をかけるとその海兵は甲板に落ちたロープを回収しながらせわし気に返事をした



「マリンフォードへ緊急招集命令が出たのでその準備です、もうじきボルサリーノ大将と合流予定ですし...あ、ほらアレ」



ロープを両腕に抱え、海兵が顎でメロの後ろの海を指した
振り返るといつの間にか向こうの海面に大きな海軍船が二隻海に浮かんでいるのが見えた



黄猿_そう別名で呼ばれる大将とはメイド試験の面接試験で一度顔だけは見たことがあるはずだがボンヤリとしか思い出せない




「ボルサリーノ様は何がお好きでしょうか?」



「ん〜なんでも好きだけどねぇ〜」



ロープを抱えた海兵に質問したが、質問に答えたのは別の人物だった
メロは声のする方へ顔を向け“おはようございます”と頭を下げながら、誰でしょうかこの人は?と小さく疑問を抱いた

顔を持ち上げ隣の海兵へ視線を送ると、海兵はハッ_と気が付いたように敬礼をし背筋を伸ばした
同時にせっかく拾ったロープはドサリと甲板に落ちてしまったがそれどころではないようだ




「ボルサリーノ大将!お疲れ様です!」


「ご苦労様〜、君はぁ...メイドだったかなぁ?」


敬礼する海兵へ適当に返事をして、ボルサリーノがメロを覗き込むようにして腰を曲げまじまじと見つめてきた

それに動じることもなくメロはその表情をピクリとも変化させずに、はい_と冷静に応える


機嫌よさそうにボルサリーノは笑みを浮かべると姿勢を元へ戻し船の上を見渡した


「主人はまだベッドの中かなぁ?」


「お呼びしてきましょうか」


「ん?ん〜いぃゃ、いいよぉ〜それよりも朝食を作ってくれる?ぁ、もしかしてクザン以外の命令は聞けないかなぁ?」


「...いえ、おつくり致します」


それにしても...彼の乗っているはずの海軍船はまだ到着していないのに、何故ここに居るのだろうか...
どうやってこの船に乗ったのだろうか?
この人もクザン様のように海の上を渡る能力があるのだろうか?

それに、緊急招集とは一体何事だろうか...


頭の中では疑問が渦巻くが、周りの海兵が彼を目にするたびに敬意を示すのを見ると彼が三大将の一人、ボルサリーノ大将なのだと信じられる

キッチンへ向かう私の後ろを悠々とした足取りで着いてくるのを時折横目で確認しながらもあのまま二度寝してしまえばよかった...

と後悔した______





















「ッ〜____ぅう...ん...れ?」




なんだ、まだ朝か_薄らと瞼を持ち上げて朝を背負う窓を見た後に昨夜のウィスキーのせいで痛む頭を片手で抑え、フと記憶が蘇る


隣で眠っていたはずのメロの姿がない...



まさか夢だったのか?



あぁ...と溜息を吐いて瞼を降ろして胸あたりまで落ちたシーツを持ち上げた時、甘い紅茶の香りが鼻腔へ届いた、その瞬間、ガバッ!と起き上がり_____



「ッ〜...ッてぇ...」


二日酔いの後遺症に起き上がった体を前かがみに折り畳んだ
シーツに残る彼女の残り香がまた香ってクザンは痛む頭を片手で抱えながらベッドから這い出た


きっと甲板で朝の海を眺めているのだろう_


徐々に和らぐ頭痛にホッとしながら着替えるとネクタイを首にぶら下げたまま甲板へと足を運んだ













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