メイド

□ハートのチョコレート
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所変わってここはマリンフォード、数時間すればクザン、ボルサリーノが到着すると聞いたが、一足先に戻ったサカズキは港でトラン王国国王をセンゴクと共に待っていた



「トラン国が先に到着しそうじゃな...」



センゴクがそう呟く、マリンフォードに残る海兵が綺麗に整列を組むのを眺め、地平線へと目を向ける


センゴクの呟いた通り、暫くすると三隻の海軍船と共にトラン国の船が海面に浮かんでいるのが見えてきた



「面倒なことにならなければいいが...」



顎髭を摩りながら言うセンゴクの横顔をチラリと見やり、サカズキは海の上を睨み付けた





『優秀なメイドを探しておりまして___』



電伝虫から聞こえたのは若い青年の声で、爽やかとも思えたが、その内容は妙な胸騒ぎを覚えさせた



「何を企んでやがるのか...」



海軍のメイドを所望しているような発言にセンゴクも眉を顰めていた

サカズキは溜息を吐くようにボヤくと徐々に近づく艦船を迎え入れる様に背筋を伸ばした



























「メロちゃん?俺のチョコはないのかな?」


朝食も終え、もうそろそろマリンフォードへ到着するだろうとボルサリーノは自分の船へ戻った

やっと二人になった食堂で片付けに向かおうとするメロを、椅子に座ったままの体制で引き寄せ、自分の腕の中に閉じ込めると拒否することなく彼女も俺の背中へと腕を回し顔を俺の胸へ埋めた


「残念ですがありません」


嘘つきめ_彼女の事だ、絶対に一つは自分様に残している筈だ


「ふぅん...じゃぁ...」


軽々と彼女を抱き上げ立ち上がると片腕にメロを乗せたまま厨房へと足を向ける

途端にメロの体が強張って、いつもの感情のない声が「降ろして下さい」と声を出した


「アレはチョコレートだよね?」


厨房の机に一粒皿に置かれたハート形のチョコレート、クザンの言葉に彼女の肩が残念そうに降りた気がする


その反応だけで満足かもしれない_クザンはハハッ_と声を出し笑みを浮かべるとメロを床へと降ろした


「ごめんね、大丈夫チョコは取らないからね」


「差し上げる予定はございませんので」


意地悪な笑みを浮かべるクザンを見上げると不意打ちに額へキスを落とされた

そんな事で機嫌が直る自分も自分だが...



ご主人の気分が変わらないうちにチョコは食べておこう...


そう思い早々とクザンのそばを離れて皿の上のチョコを口の中へと一口にほおり込んだ



「あーぁ...半分くらい残してくれると思ってたのにね」


甘く溶けるチョコを味わっているとご主人が残念そうに呟いて机の横の椅子へ腰かけた
必然的にご主人を見下ろす形になってしまい目が合ったがスグに視線を逸らせる




「っ_____」



また腕を掴まれて引き寄せられた_見上げるご主人にそれを見下ろす私


先ほどの意地悪な笑みとは違い、優しい笑みが私の視線を外させない


「もう食べてしまいました」


彼女がそう言うと甘いチョコの香りが届く、それに引き寄せられるようにして彼女の唇へ唇を重ねた



上手に甘やかすようにして、ご主人の掌が私の頭の後ろへ伸びてもう片方の手で腰を固定され体を密着させる...


あまりの心地よさにご主人へともたれる様にして体を任せた

彼の力強い腕が私を支えて、過保護な子供のように世話をやかれる感じが何ともくすぐったいほどに嬉しい...


離れようとする唇に、もっと_と言わんばかりに自分から口づけを落とすとそれに応えてくれる...




こんな甘い時間が、ずっと続けばいいのに...







「ご主人...昨日はごめんなさい__」


「気にしてないよ____」






打ち寄せる波のような穏やかな声、心をくすぐる甘い言葉...ひんやりした大きな手...


戸惑いや不安はポロポロと剥がれて、でも...



ご主人は気が付いていない...




私はまだ、恐れている...








ドラクル様は生きてらっしゃる______









クザンにもう一度口づけを落とし、洗い物をします_と言って彼に背を向けた...




僅かな動揺もクザン様は見抜くだろう...


私はそれを見抜かれないように、彼を不安にさせないようにしなければ...




だって、私が愛しているのはクザン様





貴方なのですから_______









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