メイド

□王様のメイド
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彼女は美しかった



春を思わせるような微笑、泣き顔は雨に濡れた寂し気な華のよう...



それだけじゃない...



何もかもが完ぺきなのだ



可憐な動作その一つ一つが私の胸を震わせて、そして...



孤独を押し付ける...






あの日の彼女は特別に美しかった...




追い詰められた小動物のように怯えたかと思えば、その瞳の奥に悲しみのような迷いを映し出していた



その揺れて輝く瞳が美しすぎて、息を呑む



右の腹を突き刺す痛みなど気にもならなかった


彼女が私の腕の中に進んで飛び込んでくるなんて...



いつぶりだろうか...



あぁ...彼女の震えが刃物を通して私の腹の内側を震わせる



「ほら...笑って見せてごらん?」


俯く彼女の顔を持ち上げると、その頬に涙が伝う、その行方を止めてやると、彼女の頬がヒクリ_と痙攣する...



「...笑うんだ...」


ゴリュッ_


刃先が骨まで到達して、彼女の笑顔とも呼べない顔の頬に血が雫となりポタリ_と落ちた


気が付くと口の中に鉄の味が広がっていて、その血が自分の口から零れた物なのだと気が付いた


宝石のような二つの瞳が見開いて、彼女は春を思わせる微笑を浮かべずに...



「...断ります」



軽蔑_________



その言葉が一番適切だろう


彼女の震えはなくなって、その軽蔑を浮かべた瞳が私を孤独の暗闇へと押し倒す


薄れゆく意識の中、彼女の姿が遠ざかる




行かないでくれ...











お前は...俺のモノだ...



俺が笑えと言えば笑い、泣けと言えば泣く






鞭の痛みが足りなかったのか...?


その背中に血が滲むほど十分に教え込んだつもりだったのに









メロ...絶対にお前を見つけ出し、今度こそ俺のモノに仕上げてやる...






意識の途切れる寸前に、記憶がフと蘇る




『よろしくお願いします』



彼女はそう言って微笑んだ...



あぁ...あの日あの時...俺は彼女の幸福な微笑に心を奪われた




















生と死の狭間を掻い潜り、目覚めた俺はすぐに彼女の捜索を始めた



あれから何年がたった?



彼女は時折夢に現れて俺の右腹を刃物で突き刺す...


そのたびに思うのだ...その瞳が美しいと...


















そして見つけた...


この海軍本拠地であるマリンフォードでメロ、君を...
















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