再会
□愛染
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「変な感じとかしねぇのか?」
宿屋に戻ると彼女はソファーに座りくつろぎ出した
俺は内心気が気ではないが、落ち着いた風にそう聞いてテーブルをはさんだ反対側のソファーに座る
「はい、特には何も...」
そう言いながら彼女は自身の両掌を見る、見た目は何もないが、あれは間違いなく悪魔の実...
必ず何かの能力は備わっているはず...
「何の能力かはわからねぇが...絶対に海にだけは落ちるなよ!俺もカナヅチだからな!」
「はい、気を付けます」
「それと...っ...もぉいい!寝るぞ!」
俺は別にお前を嫌いじゃねぇ!_そう言おうとしたが、口に出すような事でもない、というか、言えなかったのだ
エースはソファーにバサッと横になり目をきつく閉じた
「ベッドで眠らないのですか?」
「馬鹿野郎、女をソファーで寝かせる分けねぇだろ」
「...それでは、一緒に寝るというのはどうでしょうか」
彼女の言葉に耳を疑った、閉じていた目を見開いて飛び起きた、言葉を理解し一気に紅潮する顔面
何か言い返すべきなのだがパクパクと口は開閉するだけで、今の俺は間抜けな顔をしているに違いない
「...嫌いな人と一緒は嫌ですか?」
無表情が頭を傾けてそう言った...
「だっ誰も嫌いだなんて言ってねぇだろ!
別に嫌でもねぇ 「では、ベッドで眠ってください、
私を嫌いではないのであれば」
...彼女は相変わらずの表情で俺の言葉を遮った
俺はまた言い返すことができなくなって、赤い顔のままベッドへとむかい荒々しく横になった
「これでいいんだろ!気は済んだか!?」
負け犬の遠吠えというのだろうか、捨て台詞のようなものを吐きながら枕に顔を埋めるエース
「はい、それでいいです」
彼女の変化のない落ち着いた声がそう言って、部屋の明かりが消される
部屋に一つしかないベッドだが、大人二人が眠るには充分な大きさだ
暗闇に視界はまだ慣れずに、彼女の歩く音、そしてベッドへ上りシーツが擦れる音が益々緊張を高ぶらせた
「お前...俺以外にこんなことするんじゃねぇぞ...何されるかわかったもんじゃねぇ」
「...こんなこと?」
「っ///だっだからだなぁ...///男と同じ部屋で寝たりとか...///あーもぉ!なんでお前そんなことわっかんねぇんだよ;」
「...すみません」
「...///とにかく、約束しろ」
「はい、約束です」
暗くて彼女の表情は見えなかったが、素直な反応にエースは呆れながらもまた顔を赤くしていた
まるで好きな女を口説いているような事を先ほどから言ってしまっている
こんな無表情で不愛想でかわいいだけの女に俺はなんてことを///
身悶えるエースをよそに、隣からは静かな寝息が聞こえてきた
暗闇に視界も慣れ、彼女の方へ顔を向けてみると心臓がキュッと締め付けられた
「別に、好きでも嫌いでもねぇよ...」
納得のいかないような表情を浮かべ、彼女に背中を向けてぎゅっと目を閉じた
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「ぜっったいに海に落ちるなよ!」
ストライカーの後ろに昨日と同じように彼女を乗せると、エースは念押して同じ言葉を繰り返した
彼女は頷いて柱に両腕を回す
「...///」
どうも昨日から俺はおかしい、彼女と目が合うと頬が緩んで幸せな気持ちが全身を駆け巡るような変な感覚に襲われてしまう
夕べだって、結局一睡もできなかった...
エースはその間抜けな顔を見られないようにと表情を無理やり引き締めストライカーに乗り込んだ
結局のところ、彼女の能力は何なのかはわからなかったのだが、そんなことよりも今の自分のこの妙な感情が思考を邪魔する
もしかするとこれがコイツの能力なのか?とすら思えてきた
結局答えは出ずに、俺はマルコに言われた通りに、シャンクスの乗る海賊船の方向へとストライカーを走らせた