再会

□偽りの過去
1ページ/4ページ






船が揺れる度に、ローソクの灯りが消えそうに細くなったり、またそれが明るくなったりして船内を照らす...


深夜の船内は静かで

もう慣れた船の揺れ...


だが馴れないレッドフォース号の船内


卵の殻で自分を包んでいるような、ひ弱な孤独...


シャンクスの部屋の一人がけのソファーで両足を抱え、膝に顔をうずめて深々と嘆く...

こんな事...いつもの事じゃないか...

誰も信じないと、信用しないと、味方なんかいないんだと...

そう思って生きてきたじゃないか...

たった一握りの希望さえも持たないように...

そうやって生きてきたじゃないか...


「...もぅ...平気です...」


ベッドの横に座っていたシャンクスに無表情がそう言った

その顔に涙の面影はなく

ただ、処理しきれなかった闇のような暗い感情が彼女の表情に影を作っていた


「...俺は別の部屋で寝る、今日はもう休め...」


シャンクスはそう言うと部屋を出た
メルはそれを見送った後、視線を窓へとむけた

闇にほのかに光る水面...

モビー号はすでに見えない...


毅然として過去を決別できればどれほどいいか...


私は心の奥底で燻るような未練を無視して
視線をベッドへ向けて眠りにつくことにした



________________________________




海に沈んでゆく

ずぶずぶと耳や口に水が入り込むような気持ちの悪さ


誰か誰か


助けて


手足を忙しなく動かしては死から逃れ出る道を考えるが体は深く暗い海へと引きずり込まれ、やがて...







『アンタのせいで...』



母親が現れた、ずぶ濡れの私に憎悪の視線を向けて吐き捨てる

胸の内臓を全部押し上げて出してしまおうとしているかのような咳が出て





息を切らし両膝に手を当て前屈みに背中を曲げ、次に出る咳を堪える

ケホ...と出しそびれた咳のような声が出て、そのままの姿勢で顔を持ち上げた






『私があの子の事好きだって知ってたくせに!!メルちゃんなんか大っ嫌い!!』





小学生の頃の親友が口を尖らせ、私を睨みつけていた

濡れた髪から雫がポタリと床に落ち、また咽返る


じわじわと身体を不安が囲みはじめ、動くことが出来ない...

心臓は壊れそうなほど脈を打って息が詰まる...



ドクッドクッドクッ____



ッ______




見開く瞳が...また人をうつす...



いつの間にか服も髪も乾いていて、髪が冷えた風になびいた





『ほら...次は僕の為に泣いてくれよ...君の全てを見たいんだ...』




その人は私にナイフを突き付けた...


あぁ...


私は...



彼を...刺した...



何もない空間が瞬間にして当時の彼の部屋に場所を変えた




彼の部屋の匂いが背中をゾッとさせる...

安っぽいナイフはまだ此方に向いていて、薄気味悪い笑みが私を見つめている...



それでも...私の表情が気にくわないらしく、彼は狂ったようにナイフを振り回した...




怖かった、殺されると思った...



狂った刃先は家具の端にぶつかって、壁へと追い詰められていた私の足元へと滑るようにして転がってきた___







私は...


ソレヲ...手にした...













...死ね...死ね...シネ...







『殺す気なんかありませんでした』








死ね____________




自身が一番怖かった、目の前で昨日まで愛した人が真っ赤な血を流しているのに...



簡単に食い込んでいく安っぽいナイフ...

彼の肉に埋まって、銀色の部分はもう見えない...


それでも...私は肉にねじ込む...



痛みで叫んで暴れる彼に馬乗りになって、彼が痛みに意識を飛ばしてしまった後も...









死んでほしいと願ってしまっていた...








『一生許さないよ...僕を裏切った君を...』








正当防衛...


その言葉で守られた...



腹部に包帯を巻いた彼は、弁護士の前で私を睨みつけた


大丈夫、彼にはもう会う事はない...


だって今私は...






青い空と海が視界いっぱいに広がって


振り返ると海軍の文字...


マリンフォード...?


実際に来たことはない、だが、この場所を私は知っている...






『エ――――ス―――――!!!!』








声が響いた、誰の声か分からない、一瞬にして辺りが火の海と化し大勢の人が...


海軍と...海賊達...


その両者が命をかけて戦っている


私の真横を少年が走り抜けた


あれは...ルフィ...?



だが、その姿は本の中の彼ではなく、幼い...ルフィの見つめる先にメルも視線を向けて、ゴクリと息を飲み込んだ





「エース...さん?」




頑丈な鎖に繋がれて、海兵に今にも首を切りおとされようとしている


やめて...ダメ...


このシーンを私は知っている


全身の血が冷えわたって、動悸が高まる


マリンフォードの海軍本部、その上段の三大将


その中の赤犬がギロリと鋭い視線をエースの背中に向けている...



あぁ...やめて...彼は私の大切な人...



震える手を伸ばした瞬間、足元の石畳が崩れ落ちる、瓦礫の隙間からエースの姿を瞳に映すがすぐに視界は暗闇へと引きずり込まれた











『愛してくれてありがとう...』








『行かないで...おいていかないで...』


























次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ