【赤い花.】
記憶とはまるでパズルのようで
日常のなかの印象ある記憶は
頭のなかで1ピースずつ形成されてゆく
嫌なことはそのパズルの継ぎ目に押し隠して、いつの間にかなかったことにしてしまう
それがどんなに強く影響した記憶だとしても、パズルの1ピースにはなれはしないのだ
隙間にある接着剤のような、あってもなくてもいいようなもの、それでも...
崩れかけたパズルから時折、不良品としてパズルの1ピースのような形で現れるのだ...
こんな風にして...
「離して！離しなさいよ！
あんたなんか知らないっていってんでしょ！？
コノっ！
ウすらボケ！！！」
「ウすらボケ！？
かーっ...んーな汚い言葉！！
どこで覚えてきたんだよ;！？」
まったく...と呆れ顔を横に振り
彼は私の腕を強引に掴んで離そうとしない
私が彼に何かした？
いいや、なにもした覚えなど記憶にはない。
ほんの１分前に初めて顔を合わせて、いきなり腕を捕まれたのだ...
彼の身なりはどこからどう見ても海賊で、私はどこからどう見ても只の町娘
接点などない！
「はぁ！？いい加減にしなさいよね！
気持ち悪い！！」
なのに彼は嫌がる私をずるずると引きずって、その横顔は満足そうに微笑んでいるのだ...
「だーから、いってんだろ！？
お前は俺の女なんだよ！」
「だから！彼氏なんかここ数年作った覚えないっつーのっ！！」
あぁ腹がたつ、この海賊の言葉が嫌みにすら聞こえてきた
抵抗を続けるが、強く捕まれた腕はそのままで
彼の背中に言葉を投げつけながらも過去の記憶がじわりじわりと溶けだしてくる
乾いたと思っていたはずのパズルの継ぎ目にある接着剤
それはまだ、乾ききっていなかったようだ
もう何年も前のことなのに...
アイツは私を２番目の女として扱っていた
私はアイツの一番だと思い込んでいて...
こっぴどく振ってやったけど、アイツを思う未練は私のなかでしくしくと泣いていた
今となってはどうでもいいことで、私もまだまだ経験不足のお子ちゃまだったと笑い飛ばせるのだが...
.........？
俺が付き合ってやるよ！
嫌な記憶の狭間で、誰かにそういわれた気がした...
あれは、夢だったはず...
「ちょっ！
ちょっと待って！！」
「んぁ？なんか思い出したか！？」
「いや、思い出してはないけど...
ってか！何処に向かってンのよ！？」
気が付けば町からは随分と離れてしまい、森の中を進んでいた
それに、この道を真っ直ぐに行けば何があるのか私は知っている...
「お前の好きな場所
前教えてくれただろ？」
.........あぁ...
なんか...
思い出しそうで思い出せない...
彼の笑顔を見て、知っている顔だと記憶が言う
抵抗していた身体はそれをやめ、思い出したい気持ちで彼の手に導かれる
そこは、私しか知らない小さな花畑...
アイツと別れてからズット来ていなかった場所
「どうだ！思い出したか！？」
彼の手が私の腕を解放して、その笑顔が振り向いた
さあっと風に揺れ、草木が擦れる音、花畑の花が風に揺れ
思い出せと語りかける
記憶の中で、年々減ってゆく花畑に、新しい種をまいて彼は言った
青い花が咲けば笑ってくれ
白い花が咲けば抱き締めてくれ
赤い花なら...
「え...エース......？」
「やっ...と思い出したか！
バカ野郎」
「だって！私あのとき
めちゃくちゃ酔っぱらってたし
夢だと思ってわすれてた...」
「は！？んじゃぁ約束は！？」
「約束ぅ？
なんの事かさっぱり」
エースはこの世の終わりと言わんばかりの悔しそうで、悲しそうな表情をうかべて、花畑に大の字になって転がった
あーぁ！何でだよ...
ちぇっ！とエースのぼやきが下から聴こえる
......赤い花が咲けば...
チュッ...
「あのねぇ、覚えてる方がおかしいでしょ？」
「え...ぁ......え///！？」
青い花が咲けば笑ってくれ
白い花が咲けば抱き締めてくれ
赤い花が咲けば...キスしよう？
１面に咲いた風に揺れる赤い花...
忘れていた彼のはにかんだ照れ笑い
彼との些細で濃厚な記憶は、赤いパズルの1ピースとなってはめ込まれた。
「もう一回！」
「ばっかじゃないの！？」
えぇ...と。
完。
読んでくださりありがとうございました！！！
めちゃくちゃ適当...ごふっげふんっごほんっ！！
めちゃくちゃ考えました〜！
エースと花畑に行きたいなぁデートしたいなぁ...
って思いながら、ジブリのパズル組み立ててました！
よろしければコメントどうぞよろしくお願いいたします。