メイド

□メイドは海が好き
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次の日_


朝食の後メロは

朝から用意していた

大きなバスケットにサンドウィッチや

飲み物やお菓子を詰め込んで


重そうな荷物を玄関へと運ぶ





ドアを開けると_

クザンが青い自転車に荷台を取り付けて

出かける準備を完了させていた




「自転車…ですか?」



徒歩かと思っていたメロは無表情ながらも珍しいものを見るかのように自転車に視線を送る



クザンはバスケットをメロの手から受け取り

自転車の前方へ括り付ける



「そ、自転車…これで海に行こう」





おいで_






そう言われて自転車へまたがるクザンが

荷台をポンポンと叩く




メロが頷いて横乗りになると

自転車はゆっくりと進みだし、次第にスピードを加速させてゆき



クザンの背中に捕まっているメロの頬にあたたかな風が心地よく当たる



キィーコーキィーコー_


と遅くも早くもないスピードでスグに港へと到着し


じきに止まると思っていた自転車はスピードを減速させる様子がない



「ご主人?海に飛び込むのですか?」


「いいや…」



前輪が海へ


カタン_


と音と振動と共に石畳を越え降りる




自然と回した腕の力を強めるが

いつまでたっても傾いて倒れる感覚が襲ってこないことに気が付き


瞳を開けると港は五メートルほど先に離れていて、自転車の通った後がピキピキ_と音を立てて凍って行っている



「ご主人…すごい…です」



無表情な顔のパーツの瞳を大きくさせてそう言うとクザンは


そうでしょ_


とだけ言って自転車を進ませる






青と青の狭間で自転車がぐんぐんと進み


見る見るうちに海軍本部が遠ざかり


ついには見えなくなった





メロはクザンの顔を覗きみる


その横顔は少し微笑んでいて

彼が海を好きなのだと知らせた




私と同じように…




「どこまで行くんですか?」



そう聞いたときだった_



ヒュッ_と風を切る音と共に緩んでいた手がクザンから離れて

体が後ろへと傾いてゆく


遠くなる背中________



ザパーン______





「メロっ!!!」



沈む手前でクザンの手がしっかりとメロの左腕を捉えた





「っ…ケホッ____っ…一体・・・・」



一体何が?_



顔を上げて何があったのかスグに理解した


巨大な海王類が大きな影となりクザンの背後から
大口を開けて今にも二人を飲み込んでやろうと構えている



氷の上へ引き上げられて




ありがとうございます_



その言葉を飲み込んだ……



まるで猛毒のような殺気を纏ったクザンの姿にメロまでもがゾクリとその身体を震わせた


首だけ振り返り海王類をギロリ_と睨み付ける





「何してくれてんの?あぁ?死ぬ?」




そこから先はクザンの一方的な攻撃で

数分もかからないうちに海王類は氷の塊と化して



「ご主人…」



足を振り上げたクザンの腕を右手で掴む


ジュッ_という音と共に焼けるような痛みが身体を走る



「ッア・・・・メロちゃん;!?」



慌ててメロから腕を離すクザン、その表情には怒りの感情はなくなっていて


心底心配するような表情で_


メロの手は冷え切ったクザンの体に触れたことで火傷のように赤くなり凍傷を負っていた



「大丈夫です…もう…やめてあげてください、私は平気ですから」



痛みの表情も浮かべづに、彼女は変わらぬ無表情で俺をその瞳に映す_


ごめん_


そう言って伸ばした手を見て…


伸ばすことをやめた…


冷気で覆われた手は外気に白い煙を作って、その冷たさを知る…




この身体じゃなければ…彼女に泳ぎを教えることも


彼女を傷つけることもなかった_


彼女を今抱きしめることも出来たのに…







ご主人のこの表情が嫌いだ…


悲しそうな…悔しそうな表情が…


ご主人も…私と同じ…



自分を責める事しかできない人間なんだ…




「ご主人…?」



そう言ってクザンのひんやりとした頬に暖かい両手を伸ばし引き寄せる


「っ・・・・」



一度拒まれて_それでも引き寄せてその首に腕を絡ませて抱きしめる_



「初デートに失敗はつきものですよ、ご主人」



「ごめんね_メロちゃん…痛くない?」



「平気です_でも…傷が残ったら___」




ギュッと腕の力を強めてクザンの耳元で囁く_









「お嫁さんにして下さいね」














あぁ_本当に君は_____可愛い人____














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