メイド
□海賊さんとメイドさん
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海兵達は異例な事態に動けないでいた、黄猿は今は海へ出ていて不在
今は三大将の中の犬猿の仲であるクザンとサカズキが仲良くこの事件とも言える出来事を治めようとしているなど...誰が思ったことか
「奴の迎えが必ず来る、その時が狙い時じゃろう...」
「あぁ、俺は右から奴の動きを凍らせる」
「なら、わしは左からメロを助ける、とどめは貴様がせい...」
あの二人が仲良く作戦会議だと;!?
海兵達は人質がよっぽどな重要人物なのだと思い身を引き締める
実際はただのメイドなのだが
そうこうしている間にローは海辺へと到着した、海兵達はいないものの、背後から二人の大将が付いて来ている...
といっても随分と距離はあるのだが
ローは自分の船を見つけ、べポが手を振っているのも視界に捉えた
一歩踏み出そうとした時、メロがローの肩から顔を持ち上げた
「ローさん、開放してください、先ほどから眩暈がするので...」
眩暈など本当にしているのか?と疑ってしまいそうになるその無表情、だが、先ほどよりも息が上がっているようにも思える...
「...薬は飲めるのか?」
どう思っても心配されているようには思えない、だって、ナイフの先はもうずっとメロに向けられているのだから
「...飲みません」
(飲みたくありません、あんな苦い物)
「...飲めませんじゃねぇのか;?」
「いえ、飲みません」
ローはチラリ、と遠くの大将達に目をむけ、またメロを見る
ルーム_
シャンブル...
ポツリポツリと呪文めいた言葉を言うと、右手にあった筈のナイフが消え、変わりに錠剤が現れた
まさか...飲めと言われるのだろうか...
「飲め」
「遠慮します」
「...」
水もなしに飲めるわけがありません_
その時、ローが手のひらの小さな錠剤を自身の口の中へ入れた
はてなを浮かべる間もなく、ローの右手がメロの顎を固定し、そのまま唇を重ねられた
「ヤッ...んんっ......」
顎を持ち上げていた手が唇をこじ開けて、舌が口内へと入ってきた
に、苦い...
薬が口の中へ舌と共に入れられた
逃れようにも左腕に抱きかかえられているため逃げ場などない
ゴクッ_とメロの喉が音を立てると、やっとローの唇が離れた
口の中を今すぐ洗い流したい、そう思っているとローが後ろへ振り返り、地面へメロを下ろした、ローを見上げる
「眩暈はまだするか?」
「...いいえ」
言われてみれば、胸の辺りが気持ち悪かったのだがそれも引いて来ている
薬のおかげか...
ローの視線が背後に向けられていることに気が付きメロも振り返る、そこには赤犬と青雉が怒りを表情に張り付け、ピキピキと額に青筋を作り上げている
「ええ度胸じゃ...」
「死にてぇみたいだな...」
ギロリ、と獰猛な二人の眼光がローを睨み付ける
「...ご主人、サカズキ様...おやめください」
メロはローに一度目を向けた後、二人の元へ小走りに駆け寄った
「やめろと言われても」
「もうやめらんねぇのよ...」
そう言ってメロを通り過ぎる二人...
ドサッ_________
背後で、鈍い音がした
二人ほぼ同時に視線をメロへ向けた
そこには地面に倒れ込み動こうとしないメロの姿________
「ッ…メロちゃんっ;!」
今までの怒りを消し、クザンは目を見開き慌ててメロへ駆け寄って彼女を抱きかかえる
「青雉;メロは.....!?」
サカズキもメロに視線を送り無事を確かめる
だが、ほんの数秒でもローにスキを与えてしまったことに気が付き、我に返りローの居た場所へ視線を戻したが、そこには人影も何もなくなっていた
「メロちゃん!?」
「平気です」
耳元で大声を出されてメロは表情には出さないが、クザンの腕の中から逃れて、耳を塞ぐ仕草をして見せる
「ワシらをハメよったな...?」
「は;?」
サカズキの言葉に間抜けな声を出ししゃがんだまま一歩離れた所に立ち上がったメロを見上げる
「こうしなければ、悪魔の実の能力で殺す、と脅されましたので...申し訳ありません...」
ローに頼まれた覚えはない、だが、あの苦い薬のお礼に_と一役かってやったのだ
メロは頭を下げた後、クザンに手を伸ばし立ち上がるように促すと
なるほど_と苦笑いを浮かべ、その手をとりクザンが立ち上がり
メロを腕の中へ引き寄せた
サカズキは気を使って早々にその場から立ち去る
「ご主人、海賊さんを追わなくてもよろしいのですか?」
まだ熱のこもる身体で、その腕を拒むこともなくそう言うメロ、クザンはンー_と口を閉じ考えるような声を出したが、正直もうどうでもいい
きっと追いかけると言えば、彼女はまた別の手段を使って俺を引き留めるだろう
「メロちゃん?どうしてあいつを逃がしたの?」
頭上でクザンが優しい声でそう言った、自ら逃げようと思えば逃げられたはずだし、演技までして海賊を助ける必要もないのに…
クザンにはすべてお見通しだったようだ
メロは点滴の後にローが貼ってくれたガーゼをクザンに見えるように持ち上げる
「…点滴を抜いてくださいました、それに薬も」
「なるほどね;」
たったそれだけの事だが、彼女にとっては嬉しいことだったのだろう
それにしても、一日のうちに二人に大事な人の唇を奪われるとは;
クザンは自分の不甲斐なさに溜息を吐いた
「ご主人、病院に戻らなくては…」
「あー…病院ねぇ…」
腕の中で俺を大きな瞳に映すメロ
病院に帰したくない
もっと触れていたい…
「…メイドをクビにはなりたくありません」
連れて帰ろうと思ったがどうやら読まれていたようで、クザンは苦笑いをこぼした
「しゃーない…病院に戻るか」
そう言ってメロを右腕に抱えると、クザンの首元へ額を寄せもたれ掛かるメロ
本当はクザンと同じで、共に家に戻りたいと思った、しかしこのまま戻っても、薬の効果が切れればまたクザンに迷惑をかけてしまう
今の間だけでも触れていたいと、甘えていたいと思い、そっと身を寄せた
「ご主人…退院したら沢山キスしてください」
「…心配しなくてもそのつもりだからね」
うちのメイドホント…かわいい