『しょうせつ』

□SS集fromてぃき
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1,サラリーマンの話


なんのために生きてんだろう…、最近の忙しさに家庭も仕事どうでもよく思えてくる


今日は1人息子の誕生日
「早く、早く!」
遊園地に連れて行く約束に期待を膨らませた息子の楽しげなに急かされ、目を覚ます
久々の休日、家族との一時…
「次は、アレに乗ろう!」
そう言って手を引く息子の声を打ち消す様に携帯の着信音が響く
職場からの着信だった
「はい、谷口です」
息子を制止しなが対応する
「この前の企画の件なんだが、上が君の企画を大変気に入ってな、君の企画に乗ってくれるそうだ
明日までに細かい数字を直して書類を提出してくれ
もちろん出てこれるな?」
休暇の終了を伝える旨の声が携帯から発せられる
「なっ、ありがたい話ですけど…
それは、今すぐにということでしょうか?」
「当たり前だろうが!
早く出てきて書類を提出しろ、と言っているんだ」
「今日は息子の誕生日なんです!急な話ですし、明日まで待っていただけませんか?」
なんとか泣きついてみる
「上にはすぐに提出すると言ったんだ!私の顔に泥を塗る気か?」
かえって来た答えは無情だった
泣き止まない息子を女房に任せ、遊園地を後にする
(なんのために仕事をしてるんだろう…、家族を泣かせてまで上司のために働くのが仕事なのか…)
イライラしながら車をとばす

「待たせたな…、」
「悪いな、忙しいのに手を貸してもらって」
先に集まっている同僚達に声をかける
「気にすんなよ、同じ部署なんだしお前じゃなくても、どうせ誰かの手伝いをやってるだろうよ」
「そうだ、お前の奢りで酒が呑めるって話だろ?」
口々に挨拶を返す同僚達と仕事を進めていく

出勤2時間後…

「データはこれじゃなくて最新のが欲しい、誰か頼めるか?」

出勤3時間後…

あとは、これをまとめて入力するだけか…
「ちょっと休憩いれてくるは…、お前らもありがとな、後はおれだけでなんとかなるから、自分の仕事に戻ってくれ」

(はぁ…、閉園時間までに帰れるのか?)
休憩を取りながら、遅くなることを伝えるべく、携帯を取り出す
新着メールを知らせるランプが点滅している
それは息子からのムービーメールだった
「パパ、
お仕事頑張ってね」
「早く帰って来て、一緒にケーキを食べようね」
泣きはらした顔に笑顔を浮かべ、おれに頑張れと言ってくれていた

それは、どんなモノより、おれをやる気にする言葉だった
(おれには家族がいるんだ…、こいつのためにも頑張らないとな)
バカみたいにやる気になった顔を隠すみたい安いコーヒーを一気に飲み下し、顔をしかめる
(待ってろよ、父さんがでっかいケーキ買って帰ってやるからな!)

早く仕事を終わらせて、家族のもとに帰ろう、おれは家族の笑顔のために働いるんだから
久しぶりに、そんなことが思える1日だった


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