君は何を想う? 完結

□番外編  とある日の瑞貴家 4〜6 更新
6ページ/6ページ


食事を終えて、美咲と後輩二人に片づけを頼むと、俺は風呂に入るべく部屋に着替えを取りにいく。

適当に手にとって部屋を出たら、二階に上がってきた真崎と出くわした。



「みーずき」

ニコニコと笑う真崎に、首を傾げる。

真崎は俺に近づくと、声を潜めてくすりと笑った。



「そんな寂しそうな顔しなくても、僕達が居座るから」

思わず顔を離して、真崎を見る。

「美咲ちゃんがここを出ていっても、僕達がいるよ。なんだかもう、僕にとっても君は弟みたいだ」

ぽんっ、と肩を軽く叩くと、呆然としている俺の横を通り過ぎて真崎は部屋に入っていった。

ホントに可愛いんだから、と笑いながら。




真崎の閉めたドアの音に押されるように、階下へと歩いていく。

「あれ、哲? どーしたの?」

廊下で、キッチンから出てきた美咲とかち合う。

「顔、真っ赤」

怪訝そうな顔で覗き込まれて、しかも言われたその言葉に思わず片手で顔を隠す。

「ちょっと、筋トレしてきた」

そのまま脱衣所へと逃げ込む。

ドアの向こうでは、若いわねぇと呟く美咲の声がしていた。





もそもそと服を脱いで、湯船につかる。
一人の時は、ほとんど沸かしたことのない風呂。


そこにつかりながら、膝を両手で抱え込んだ。




俺が、味わいたかったんだ。
美咲との時間、美咲との家族の時間だけじゃなくて。


真崎たちが一緒に住むようになって、偶然知ったこの時間。

家族との時間。



幼い頃から、家族が揃ったことがあまりなかったから。
美咲んちで味わうしかなかった、家族との時間。


それと、同じ。


血は繋がっていないけれど、既に、日常の一部となっている真崎や後輩達。

それは確かに家族じゃないかもしれないけれど。
偽でも、感じる暖かさは一緒なのかもしれない。



「……思ったより俺……、子供だな」


抱えていた足を思いっきり伸ばして、天井を見上げる。

にーちゃんやらねーちゃんやら、なんだかいっぱい出来た感じ。

後輩達は、さしずめ弟妹?



なんだか、こんなことで嬉しさを感じている自分がなんだか気恥ずかしい。




「おにーちゃんね……」





真崎も、思ったより嫌な奴じゃない。
ちゃらんぽらんにみえて、ちゃんと人を見ている。


「寂しかったのは、俺だったのかもな……」



ずっと傍にいると思っていた美咲が、俺から離れていく。
その、事実に。




絶対、直接言わねぇけど。


「真崎に、感謝、かな」


その呟きは、風呂場に少し響いて消えていった。













カテゴリ別オンライン小説ランキング

HONなびランキング


携帯小説ランキング
●NovelーLine●

前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ