君は何を想う? 完結
□君は何を想う? 第八章〜九章
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「瑞貴? どーした?」
いきなり黙りこくった俺を、心配そうに斉藤さんが覗き込む。
「あ、と。いや別に何でもないっす。そろそろ企画室戻りますか?」
腕時計を見ると、既に四時近く。
三十分はここにいる。
俺の言葉に課長と斉藤さんが頷いて、各々紙コップを持って立ち上がった。
「総務に用があるんで、俺はここで」
斉藤さんが課長に伝えると、
「あぁ、俺も行く。出張の経費申請をしなきゃならん。瑞貴、先に戻っててくれ」
出入り口にるゴミ箱に紙コップを捨てながら、指でエレベーターを指した。
「わっかりました。じゃ、お先です」
二人と別れてエレベーターの、昇りボタンを押す。
一階からあがってくるのを待ちながら、肩を回して凝りをほぐす。
最近、歳食ってきたよなぁ……
ランニングでも始めるかなぁ。
出てきた欠伸をかみ殺しながら、二階に上がってきたエレベーターのドアが開くのを待つ。
課長って、本気で美咲の事が好きなんだよな。
いや、渡す気はないんだけど。
ホントはさ。
足掻いたって仕方ないこと、分かってたりする。
美咲の気持ちに本人より先に、俺が気づいてしまったから。
――苦しいな、やっぱり。
俺も、……俺のほうが、長い間、あいつを想い続けてきたのに――
なぁ、美咲
お前は、誰を想う?
ずっとお前の傍にいた
俺に、……何を望む?