君は何を想う? 完結

□君は何を想う? 第八章〜九章
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「――宮野さん、俺知ってるよ?」


思わず、記憶のまま声が出る。


「え……?」





何を言われているのか理解できないのか、理解したくないのか。

もし、怪我がホントに美咲の言うとおりならそれでいい。

笑ってごまかすだけだ。




でも、その怯えよう。




あの飲み会の時は、率先して喋り倒してたのに。

なぜ、俺から逃げる?






「宮野さん、分かってるんだよ」

「みず……き先輩……」

視線を彷徨わせながら、宮野は呟く。



目じりにたまり始めたのは、涙?


なんで、お前が涙を流す?




上昇していた感覚が止まり、エレベーターのドアが開く。

それを見て走り出そうとした宮野の腕を掴む。


そのまま、非常階段に引きずり込んだ。


半階だけ降りて、六階と五階の間にある踊り場に連れて行く。

宮野の身体を角に追いやって、目の前に立ちはだかる。



「宮野さん」


名前を呼んで、見下ろす。

顔を上げない宮野の顎に左手を添えて、ゆっくりと持ち上げた。


怯えた、表情。

目じりに溜まる涙は、今にも零れそうで。




あぁ、怖いんだ。


お前の見ていた、優しい瑞貴先輩は、こんな男だよ?

分かりもしないくせに、よく好きだのどうだの言えたよな?



「今のうちだよ?」

「あ……の……」



視線を反らそうとする宮野の顎に添えた左手の指に、少し力を込める。


「宮野さん、言いたいことあるよな? 俺が聞けるのは、今のうちだよ?」



お前も、許しはしないけれど。

チャンスは一度きり。

誰が中心かなんて、わかりきっている。

こいつに、誰かをケガさせる勇気なんてない。

取り巻きしかできない、ただの女。




でも、その口から聞きたい。




本当に、美咲を、怪我させたのか?

もしそうなら――







頼む……

嘘だと、言ってほしい――






「宮野さん?」





その言葉が最後通牒に聞こえたのか、




「久我先輩をぶったの、私じゃないっ」





叫んだ。







久我先輩――






思わず、目を瞑る。

私じゃない――



お前じゃない、……ということは。

お前じゃない誰かが、美咲を怪我させた。それだけは、当たっているって事……
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