君は何を想う? 完結

□君は何を想う? 第十章
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「おはようございます」

いつもの時間、いつもの企画室。

いつもどおりそこには間宮さんがいて、にっこりと笑いかけてくれる。



「おはよう、久我さん。体調はもういいの?」
自分のデスクに鞄を置きながら、同じ様に笑い返す。
「はい、ご心配おかけしました」
「そう? あまり無理しないで」


椅子に腰を下ろして、PCの電源を入れた。
間宮さんも、PC画面に既に向き直ってキーボードを叩いてる。

机の端にある書類入れには、未処理のものが溜まっていて。

それをざっと読みながら、優先順位を決めて仕分けていく。




目を覚ました私は、あれからまた熱をぶり返して。

夜に哲と来た加奈子にお小言を頂戴しながら、
それから二日間課長のアパートで休んで自分の部屋に帰った。

そしてなぜか一週間の有給休暇の許可が出されていて、週明けの月曜日、今日出勤したのだ。

課長が手を回してくれたらしいけど……嬉しいような辛いような。

だって、疲れた身体にはありがたい休暇だったけど、仕事が溜まってる、溜まってる。



私が何も覚えていなかったということは、課長から皆に伝えられているようで。

誰も、何も言わない。

今まで以上に心配した目で見られるけれど、それは仕方ないし……内心嬉しい気もしたり。

心ぐるしいけれど、このまま忘れた振りをしてうやむやに終わらせてしまいたい。

どうする事も出来ない問題なんだから――



立ち上がったメーラーには、三桁後半の数はあるんじゃないかと思われるほどの新着メール。

あぁ、私にはのんびりと心を癒す時間もないのね。


なーんて、思える自分が凄いなんて思ったり。



気持ちを消そうとか、いなくなりたいとか思ったけれど。
それが出来ないなら、意識を消してしまおうとか思ったけれど。



全部、出来なかった。
周りを思うと、そのどれも出来なかった。


でも、もう、諦めた。
何もかも、望むことを止めてしまえばいい。
そう思ったら、本当に心が楽になって。

誰も縛らなくてすむなら、諦めるなんて簡単なこと。
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