貴方ったら、と、居間に入ってくるなり、妻は困ったようにため息をついた。



「お休みの日に軍服なんか着て…お金はあるんだからもっとお洒落でもなさったら?いつも同じ格好じゃ、国民に笑われますよ」

「おや、大総統夫人が税金の活用を奨めるのかね?」

「まさか。私にだってへそくりくらいありますから安心なさって」



そう微笑んだ妻はもう六十歳近い。けれど、出会った頃の少女のまま、屈託のない妻の笑顔に、ブラッドレイは目尻の皺を寄せて微笑み返した。



「私はいいよ。軍服以外何を着たらいいのかさっぱり分からない……それより奥さん」

「はい?」

「貴方もときどきは贅沢していいんじゃないかな?」


この国のファーストレディだというのに、妻は出会った頃と変わらず、質素な格好をしている。


白を基調とした服装に、膝下丈のスカートを着た妻こそ、もっとお洒落をしたらいいのに、と率直に思った。


すると妻は「いいんですよ」と悪戯っぽく微笑んで、いたわるように優しく肩を揉んでくれる。



「貴方がそういう方だから、私もこれくらいが丁度いいんです。三十年間ずっとそうだったじゃありません?」


気づかない貴方はやっぱり朴念仁ね、と、微笑んで、新しい紅茶を煎れに席を立った妻は、やはり出会った頃の少女のまま美しくて、愛しかった。








美しいひと
(私が真実を話す日が来たとしても、君はそうやって笑い返してくれるのかな)







END

大総統×夫人

夫人も夫人のお尻を愛してる大総統も大好きです(笑)

でも真面目な話、総国民を騙しているブラッドレイにとって、「妻だけは自分で選んだ」という言葉通り、夫人がたった一つの真実ならいいな…、と考えてます。

奥さんには幸せになって欲しいけど無理かなあ…。



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