記念U

□自分VS自分
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WRO本部――局長室――

リーブは目の前の光景に少しばかり困り果てていた。
一体どうしたものかと。

ルーイ姉妹はデジカメとビデオカメラでその光景を必死に撮影していた。
これはスクープだと言わんばかりに。

苦笑しながらリーブはユフィに尋ねた。

「・・・どちらもヴィンセントなんですか?」
「うん・・・」

何があったか説明しよう。
ユフィとヴィンセントは任務でニブルヘイムの神羅屋敷の調査に赴いた。
ついこの間起きたDGSについての資料があるかもしれないからだ。
地下室に行って資料を調べている内にユフィが『かみなり』のマテリアを手に入れた。
調査を一通り終えて地上に戻ろうとした時、モンスターに出くわした。
ユフィは早速『かみなり』のマテリアを使用したのだが・・・対象は何故かヴィンセントになり、魔法をキャンセルする間もなく『かみなり』は発動し、ヴィンセントに直撃。
しかも、サンダーを放った筈がサンダガ級になっていたこの不思議。
そして、煙が立ち込めてそれが晴れると―――二人のヴィンセントがいた。

片方は現在の赤マントのヴィンセント。
片方は過去のタークスのヴィンセント。

記憶や戦闘力などと言ったものは共有していたが、流石に変身能力は共有していなと判った。
そして、どうする事も出来なく、とりあえず三人でWROに戻って来たのだ。


「大変な事になりましたね」
「全くだ、どうするんだ?」

などと言うルーイ姉妹は未だに撮影を続けている。
心配など微塵もしていないだろう。

「・・・それが心配する者の態度か?」

今のヴィンセントが冷ややかにツッコむ。
二人のヴィンセントに挟まれて座っているユフィはリーブに相談した。

「どうすればいいと思う?」
「そうですね・・・昔のヴィンセントには私の仕事の手伝いをしてもらいましょう」
「・・・」

昔のヴィンセントが顔をしかめた。
物凄く嫌らしい。
無理もないだろう、今のヴィンセントと記憶を共有しているのだ。
リーブがしている仕事がどれだけ膨大なのかを知っている。

「そういう事じゃなくて、どうやって元に戻すかって聞いてるんだけど」
「それは私にも判りません。例の『かみなり』のマテリアをもう一度放てば戻るんじゃないんですか?」
「帰る途中でカラスに持ってかれた」

それはそれは悔しそうな顔をしてユフィは答えた。
帰る途中で『かみなり』のマテリアを眺めながら歩いていたら、カラスが飛んできて持って行ってしまったのだ。
その時の悔しさと言ったら言葉にできないくらいだ。ユフィにとって。

「そうなるとどうしようもありませんね。様子を見るしかないでしょう」
「やっぱりか〜」

「ここは仲間のクラウドたちに―――」

「「連絡しなくていい!」」

シャルアの提案を二人のヴィンセントがハモって拒絶した。
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