幾千通りの扉

□いたずら雀
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ある山に一つの家がありました。
その家にはヴィンセントという青年が住んでいました。
そこの家には度々、ユフィと言う名の雀が訪れます。
ユフィはヴィンセントの手伝いをしたり、お話をすることがありましたが、悪戯をすることがよくありました。
そして、その悪戯は今日もあるのでした。

「・・・ユフィ、枕を屋根の上に置いたのはお前だろ?」
「まさか?鷹がやったんじゃない?」
「・・・鷹が枕を屋根の上に持っていく訳ないだろう?」

例の如く、いつものやり取りが繰り広げられています。
ユフィはそっぽを向きながら白を切ります。
ヴィンセントは溜め息を吐きました。

「・・・どうしてこんなことをする?」
「別に?いつもと同じじゃん」

いつもならこんな性質の悪い悪戯をユフィはしません。
しかし、これをやる時は、ユフィがやきもちを焼いた時なのです。
例えば、ヴィンセントが他の女性に言い寄られたり、いかにも甘声でヴィンセントを誘惑しようとするとか。
大概、ヴィンセントは相手にしませんが、ユフィはそれでも嫉妬します。
そう、ユフィはヴィンセントのことが好きなのです。
ヴィンセントにはバレてないと本人は思っていますが、実はバレバレです。

「・・・ユフィ、今すぐ枕を下ろしてくれないか?」
「はいはい、判りました」

ユフィは不機嫌になりながら軽々と屋根の上に上って枕を取りました。

「ん」

ユフィはぶっきらぼうに枕を渡すと、早々に立ち去って行きました。

「・・・全く」

ヴィンセントは二度目の溜め息を吐くと、中に入りました。
ユフィの嫉妬は可愛いのですが、こうも毎回性質の悪い悪戯をされては堪りません。

「・・・早くなんとかしないとな」

苦笑を浮かべて、嫉妬するユフィの顔をヴィンセントは思い浮かべました。




しかし、関係が縮まる日は案外早く来ました。
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