なんか

□神社
1ページ/1ページ

「鳴上くんは大学はどこに行くことにしたの?」


ほの暗く、けれど風通しの良い所で隣に座っていた雪子が尋ねてきた。


「沖奈にある大学にしたんだ」

「あの有名な大学?偶然ね、私もそこ行こうと思ってるの」

「学部は?」

「情報か経済かな。今は情報社会だし」

「俺もそれのどちらかにしようと思ってるんだ。絶対に入ろうな」

「うん!」


雪子は嬉しそうに頷く。
まぁ、悠も雪子も成績は学年でトップだから心配する事はあまりないだろう。


「やっぱり堂島さん家にお世話になるの?それとも一人暮らし?」

「堂島さん家にお世話になるつもり。勿論、両親や堂島さんにも話しは通してあるよ」

「ご両親と堂島さんはなんて?」

「堂島さんは大歓迎だってさ。むしろ何を今更遠慮してるんだって小突かれたよ」

「だって家族だもの。菜々子ちゃんも大好きなお兄ちゃんと一緒にいられるから大喜びだったでしょ?」

「ああ。でも、大学に合格したらの話しだけどな」

「鳴上くんは勉強出来るし成績もいいからきっと入れるよ。それと、ご両親はなんて?」

「また仕事で長い間家を空ける事になるからちょうど良かったって。でも、息子を取られて妬いちゃうって」

「鳴上くんはどこでも人気者だね」

「あはは、そんな事ないよ」


言って悠は小さく笑う。
悠は男でありながら綺麗な顔立ちで、笑顔も綺麗な部類である。
雪子はそんな悠の笑顔が好きだった。


「合格してこっちにこれたらバイトとかも探さなきゃだね」

「ああ、今度は長期のバイトにも入れるからな」

「ウチの旅館どう?鳴上くんなら特別にバイト代弾むし、まかないでご飯食べられるよ?」

「え?本当に?」

「うん。両親や旅館の人たちに鳴上くんがどういう人かよく知ってもらえるし、そ、その・・・私と長い時間いられるから」


雪子は頬を染めて熱の篭った瞳で悠を見つめる。


「忙しいからあんまりお話とか出来ないかもだけど、近くにいてくれるだけでも嬉しいから」

「天城・・・」

「も、勿論、他のバイトと掛け持ちするのは全然いいんだけど・・・なるべくなら私の所に来てほしいな、なんて・・・」

「そう言っておいて、いざ俺がバイトしようとした時にもういらないってなってたりして?」


悪戯っぽく笑って言ってみせる悠だが緊張の所為もあって雪子は大きく慌てた。


「そ、そんな事ないよ!鳴上くん限定のバイト枠だし、たとえ枠がなくなっちゃっても私が作るし・・・その・・・」

「じゃあ、約束。俺が働きたいって言ったら絶対に雇ってよ」

「うん。その代わり、絶対にバイトしに来てね?出来れば・・・合格した後いの一番に」

「うん、約束だ」


お互いに小指を差し出して絡ませ合う。


「「ゆーびきーりげんまんうーそついたらはーりせんぼんのーます、ゆーびきった」」


小指を離すのは名残惜しかったが、悠と交わした小指の熱は雪子の小指に残る。
それが温かくて嬉しくて、雪子は幸せでいっぱいの笑顔を零す。
これでまた、自分と悠を繋ぐモノが出来た。
でも、これだけじゃ足りない、もっともっと繋がりが欲しい。
欲張りな自分だけれど、このくらいは許されてもいいのではないだろうか。


「ねぇ、鳴上くん」

「ん?」

「今度一緒に沖奈に―――」


「雪子ー、完全に包囲されてるから大人しく鳴上くんを解放して出て来なさーい」


親友の千枝の声が神社の扉越しに響く。
見れば、千枝の他に特捜隊メンバーが扉の前に立っていた。


「やだー」

「やだじゃなーい。もー、アンタって子は〜」

「相棒、天城と何してんだー?」

「内緒だー」

「雪子先輩だけずる〜い!私も一緒に立て篭もらせてよ〜!!」

「は〜いりせちゃん、話がややこしくなるから加わろうとしない」

「ていうか、勝手に中に入って大丈夫なんですか?神主がいないとはいえ、罰当たりでは・・・」

「キツネさんが入っていいって言ったもん」

「だからってキツネを扉の前に置くなんてズルいっしょ。無理矢理動かせなさそうだし、それよりもモフモフしてぇ・・・」

「・・・」(触らるなと言いたげな目線を完二に送っている)

「ここにも超絶プリチーでモフモフなクマがいるクマ!」








その後、みんなでホームランバーを食べようという陽介の提案の元、雪子は悠と共に神社から出て来た。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ