伝記

□ありがちなネタ中編
1ページ/5ページ

あれから三日後。
シェルクは仕事が終わったらなるべくユフィの様子を見るようしていた。
今の所ユフィに変化はなく、これといった進展も見受けられない。
残念な事ではあるが、今はそれよりももっと重要な問題が発生している。

(これは少々困りましたね・・・)

困ったシェルクはストローでオレンジジュースを吸い上げる。
チラリと横目で問題の原因―――ユフィを見れば、ユフィはティファが作った料理を配膳している所であった。
配膳先には若い男の客がいて、その男はユフィに異性を見る視線を向けていた。
いや、その客だけではない。
他の何人かの男の客もユフィを意識している。
中にはユフィかティファのどちらが好みかで小声で議論している者もいたりする。

(しかし、これを望んだのはユフィ本人ですし・・・・)

セブンスヘブンでのお泊りが決まった日にユフィはティファの店を手伝うと申し出た。
最初はティファも断ったがユフィが譲らず、ならば、という事で手伝ってもらう事にしたのだ。
お陰でユフィ目当てにやってくる客が出てきて売上に貢献出来てる訳だが、果たしてこれをヴィンセントが見たらどう思うか。

「まぁ、対策を練るのは間違いないでしょうけど」
「ん?何が?」

予想していなかった声に思わず振り返れば、美味しそうなパフェを持ったユフィが傍に立っていた。
しかしシェルクは努めて冷静に「なんでもありません」と言って首を横に振ると、ユフィに隣に座るように促した。

「休憩ですか?」
「うん。ピーク過ぎて客も少なくなってきたからね」

そう言ってユフィは美味しそうにクリームのついたバナナを頬張る。

「・・・そのパフェは自分で作ったんですか?」
「ううん、ティファが作ってくれたの。でもレシピはあなたが考えたものよ、って」

言われてユフィが食べているパフェを見てみれば、それらは全てユフィの好みのフルーツやアイスで構成されていた。
それにしても美味しそうである。
本能が甘い物を求め、シェルクはティファに声をかけた。

「ティファ、私もユフィと同じパフェが食べたいです」
「は〜い、ちょっと待っててね」

片付けをしていたティファはパフェ用のグラスを取り出し、テキパキと材料を取り出して作り始める。
そして僅か1,2分でパフェは出来上がった。

「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
「お?シェルクも食べたくなった?」
「はい。ユフィがあまりにも美味しそうに食べるので食べくなっちゃいました」
「エヘヘ、そっか。それより聞いてよ」
「どうしました?」
「昨日レノとルードっていう二人の男が来てさ、その二人もアタシの知り合いみたいなんだよ。
 それでアタシに記憶がない事を説明したら、ここにヴィンセントと行けば思い出せるかもしれないって言ってレノってやつがメモ書いてくれてさ。
 早速ティファに聞いたら、すぐにメモを捨てて忘れなさいって言うんだよ?
 なんでって聞いたら何でもってちょっと怖い顔で言われてさ〜」
「・・・どんな所ですか?」
「ん〜、もうメモは捨てちゃったんだけど、確か『ホテル・エデン』って名前だったかな?シェルクはなんか知ってる?」

瞬間、アイスを掬おうとしたシェルクの手が止まった。

『ホテル・エデン』

それは、半年前エッジに出来た夜のホテル。
無駄に全国にチェーン店を持つ所謂“ラブホテル”。
三年前に旅をしていたティファたちならきっと耳にした事のあるであろう店の名前。
シェルクも仕事の関係でその店の名とどういう店であるかを知る機会があった。
まさかそんな店を紹介するとは・・・。

「ユフィは知らなくていい事です」
「え〜?アタシにも知る権利ってもんがあるよ!」
「心配しなくても記憶を取り戻したらどんな所か分かります」
「いつ取り戻せるか分かんないんだし、いいじゃん!」
「いえ、私がヴィンセントに怒られてしまうので言う事は出来ません」

でも一応、この事は報告しておこうとシェルクは決めるのであった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ