鼻毛スピリッツ

□鼻毛15『指名手配書で優雅なランチ?そして忍び寄るカオス四天王の影』
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最下層でコキュートスを倒した天の助たち、そして最上階でニルヴァーナを倒したボーボボたち。
それによって毛狩り隊監獄ブロックの施設は大きな音を立てて動き出し、閉ざされていた出口が開かれた。
それと同時に無実の罪で捕まっていた囚人たちの牢屋の扉も開かれ、解放されていく。

「やったー!監獄が開いたぞー!」
「自由だ!俺たちは自由だー!!」

次々と監獄を出て行く囚人たちの中、ビュティはボーボボたちの姿を探していた。

「監獄が開いたって事はボーボボたちも最上階の看守長を倒したって事だよね?ボーボボたち、どこかな?」
「おい、アレをみろ!ボーボボたちだぞ!」
「え?本当!?」

天の助の指差す方をビュティは振り返る。
そこにいたのは―――

「「ボンジュール」」

魔法の絨毯に乗ってアラビアの恰好をしたボーボボと首領パッチだった。

「アラビアとフランスをごっちゃにして現れた!?」

「カモ〜ンスネーク!」

ボーボボが笛を吹くと壺の中からやつれた表情のランバダがヘロヘロと飛び出て来た。

「壺からランバダさんが出て来た!?」
「ボーボボ殺す・・・」
「大丈夫ですかランバダさん!?」
「ランバダ様、しっかり!煮干しを食べてエネルギーを充電して下さい!」
「レム!?お前何言ってんだ!!?」
「にぼーしを食べたら元気になる〜♪にぼーしを食べたら満腹になる〜♪」

煮干しを片手に陽気に歌って踊りだすレム。
今まで全くした事のなかったその言動にランバダは戦慄し、ガタガタと震えだす。

「おい・・・レムに何があったんだよ・・・」
「いや、まぁ・・・」
「これには事情が・・・」

詰め寄ってくるランバダに目を逸らし、気まずそうに言葉を濁す二人。
ただでさえレムの言動にショックを隠せず珍しく動揺しているランバダに、レムがボーボボと首領パッチの睡眠学習という名の洗脳によってハジケ枠に移動した事をどう説明したらいいか悩んでいた。
ちなみに元凶その1たるボーボボと元凶その2たる首領パッチは鼻くそほじって他人事のような表情をしている。
そんなビュティたちを他所にスマホを弄っていた天の助がとある記事をみて驚愕する。

「なっ!?おい見ろよこれ!」
「どうしたの天の助くん?」
「俺達、毛狩り隊に指名手配されてるぞ!」
「えっ!?・・・あ、本当だ!!」

天の助の持っているスマホを覗くと、そこには毛狩り隊が発信しているニュース『毛狩り新聞』でボーボボたちを指名手配する記事が表示されていた。
それぞれの顔写真と金額も載っており、見つけ次第通報するようにという呼びかけの宣伝まである。

「毛狩り隊によって指名手配されてしまった以上、しばらくは身を隠した方がいいな」
「でもボーボボ、僕ちんお腹減ったよぅ」
「うるせー!粘土でも食っとけ!!」
「おぎゃー!!!」

大きな粘土を思いっきり投げつけられて地面に叩きつけられる天の助。
ボーボボは塵を払うようにパンパンと手を叩くとそのまま続けた。

「大人しくしていた方が安全だが腹が減って来た」
「それさっき俺が言ったよね!?」
「そこで!指名手配された奴でも気兼ねなく出入りする事が出来るレストランに行くぞ!」
「そんなレストランがあるの?」

ランバダへの説得を終えたビュティが首を傾げる。
ちなみにランバダはと言うと、レムのハジケっぷりを見ていられなくなって枕を用意してレムを寝かしつけていた。
その光景をヘッポコ丸が申し訳なさそうに見つめていたとか。

「ただしそのレストランに入店する条件として自分の指名手配書を持っている必要がある」
「持っている必要があるって言われてもどうするの?どこかの町に行ってこっそり剥がしてくるの?」
「毛狩り隊の公式Twitterでネットプリントの番号が公開されているからそこから印刷だ!」
「ネットプリント!?何故に!?」
「ボク、カラー印刷〜♪」
「あ〜いいな〜!ボクもボクも〜!」
「ボクもお願い!さっき白黒印刷しちゃったからやり直し!」

急に子供のような口調になるボーボボとそれに続く首領パッチと天の助。
訳の分からない毛狩り隊公式Twitterと陽気な三人に複雑な表情を浮かべるビュティなのであった。








そして・・・

「着いたぞ」
「バウンティー・・・レストラン?」

自分たちの指名手配書を片手にとある森の奥深くにひっそりと佇む店の前にやってきたボーボボ一行。
ボロボロで暗い雰囲気のある店の外装には大々的に店名は飾られておらず、入り口横の壁に表札のように『バウンティーレストラン』と表示されているのみだった。
その店の名前を呟いたビュティは、その名前からしてもアンダーグラウンドな雰囲気を感じ取った。

「店の中は俺達と同じように毛狩り隊に指名手配された奴らがいる。しかしそのどいつもが危険極まりない奴らばかりだ。油断しないようにな」
「うん!」

ビュティはしっかりと頷いて店の扉を開くボーボボの後ろに立った。
何があってもボーボボから離れないように気を引き締めて店の中に足を踏み入れる。
すると―――

「いらっしゃいませ!」

レストランの内装は広くて綺麗なファミリーレストランだった。

「ファミレスだ!!」

客は普通の家族連れやカップルで、今目の前で接客してくれている店員も普通の女性だ。

「ちょっとボーボボ!ここ本当に危険なレストランなの!?普通に家族連れとかいるんだけど!?」
「何言ってんだビュティ、あの家族連れも指名手配犯だぞ」
「嘘だ!絶対嘘だ!!」
「ねぇねぇ!それよりも早く座ろうよぉ!」
「ボクたちお腹減っちゃった」

少年宜しく帽子を被った首領パッチと天の助がヘッポコ丸の手を握りながら催促してくる。
ここでツッコミをしていても仕方ないのでビュティたちは店員に案内されて大人数用の席に座った。
しかし座った席にはメニュー表などはなく、ビュティとへっぽこ丸は首を傾げた。

「メニュー表ないね」
「店員が持ってくるんじゃないか?」
「メニューを選ぶ事は出来ない。指名手配書の金額によって提供される料理が変わってくる。金額が高ければ高い程料理のグレードが上がって行くんだ」

言いながらボーボボは「手配書をお出しください」と言ってきた女性店員に全員分の指名手配書を渡した。

「へぇ、不思議なシステム」
「俺、懸賞金120万なんだけどどんな料理が出てくるんだろう」
「きっと豪華な料理が出てくるんじゃないかな?私は50万だからちょっと不安」

「お待たせ致しました。最高級ステーキセットとロイヤルパンケーキになります」

ジュウジュウと熱い鉄板の上で耳に心地よい音色を奏でるステーキセットがヘッポコ丸の前に出され、様々な種類のフルーツとクリームを贅沢に盛り付けた三段重ねのパンケーキがビュティの前に出される。
どちらも二人にとっては好物のもので、二人は喜びの声を上げた。

「おお!高級ステーキセット!」
「わぁ!美味しそう!みんなは何が来た?」

「イベリコ豚を使ったチャーシュー麺と半チャーハン餃子付きお待ち!」

「お、来たか」


ランバダ・・・懸賞金 100億円


出前風の男性が岡持ちの中からラーメンと半チャーハンと餃子の皿を出してランバダの前に並べる。
その光景にヘッポコ丸がすかさずツッコミを入れた。

「ええ!?出前!!?懸賞金100億円なのに!?」
「美味けりゃなんでもいい」
「いいんだ!?」

案外こだわりのないランバダにヘッポコ丸は色々驚いた。
ブチ切れられて店をポリゴンにされるよりかはマシだが。

「レムさんは何が来た?」

「ZZZ・・・私・・・そば殻の枕・・・ZZZ」


レム・・・懸賞金 50憶円


レムはそばの柄の枕を抱きしめて布団で寝ていた。

「レムさんそれ、そば殻じゃなくてそば“柄”!!」
「中身は・・・ZZZ・・・青森のうどん・・・ZZZ・・・」
「青森のうどん!?香川じゃなくて!!?」

「おい、他の客の迷惑だからもう少し静かにしたらどうだ」

「あ、ごめん」
「すいませんボーボボさん―――って!!」


ボボボーボ・ボーボボ・・・懸賞金 なんかもうめっちゃ凄い金額


ボーボボは丸グラサンをかけ、紳士のような髭を生やし、王冠を被って王様宜しく大きなテーブルを埋め尽くさんばかりに並べられている料理を食べていた。

「すっげー豪華だ!!ていうか『めっちゃ凄い金額』って何だ!?」

「ワインのおかわりはいかが致しましょうか」

「うむ、注いでくれまたへ」

「かしこまりました」

「お皿お下げ致します」

「チミ、今日のお肉はとても美味であったとシェフに伝えてくれたまへ」

「かしこまりました。ありがとうございます」

「デザートをお持ち致しました」

「今日のデザートは何かね?」

「醤油煎餅12枚入りとなります」

「デザートは醤油煎餅!?しかも大特価198円の安売りのやつ!!」

女性店員が蓋を開けて見せた醤油煎餅の袋には『大特価!198円!!』というシールが貼られていたのをビュティは見逃さなかった。
ボーボボは袋を開けて包装を破くと醤油煎餅を一口齧る。
すると―――

「うめーーーーーーーーーーっ!!!!!」
「えーっ!!?」
「今までの料理が走馬灯のように駆け巡る・・・なんて美味いんだ・・・!」

(安売りの醤油煎餅が王室風料理に勝った!?)

「へっ、醤油煎餅如きで感動するなんざ安い舌だぜ。俺の料理にゃ到底叶わねーな」


首領パッチ・・・懸賞金 600億マッジポ


首領パッチはたまごボーロを食べながらボーボボのデザートを鼻で笑った。

「アンタたまごボーロじゃん!ていうかマッジポって通貨なの!?」
「フッ、底辺料理ばかりだな。俺の料理には勝てまい」


ところ天の助・・・懸賞金 400億ぬ


「お待たせ致しました。こちらになります」

「うむ、よきにはからえ」

男性店員が蓋付きの皿を天の助の前に出す。
そして静かに蓋を開けると―――頭の付いていない魚の骨だけが皿の上に横たわっていた。

「・・・え?」

「以上になります」

「ちょっ俺!懸賞金400億ぬなんだけど!?」

「ぬなんかに通貨としての価値はねーよクソが」

「やだやだ!せめて頭だけでも付けて!!」


泣きながら男性店員の足に捕まって追い縋る天の助と、その天の助をぞんざいに扱う男性店員。
その光景に何も口を挟めぬままヘッポコ丸は憐れむような目で見ていたとか。
とにもかくにもボーボボ一行の優雅なディナータイムは過ぎていくのであった。

「どこが優雅!?」

ビュティのツッコミもすかさず入るのであった。
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