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□忍ぶ
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「僕たち・・・なんでこんな事になったんだっけ?」
「・・・『ゴルアルクエスト』の『団結』を読むとよく判る」

ヴィンセントの返答にアーヴァインは深くため息をついて枕に突っ伏した。



現在、二人は別荘の一室でベッドにうつ伏せになっていた。
それというのも、ぎっくり腰が原因である。
向きは本来とは逆の向きである。
何故かって?テレビが見れないからだ。
ちなみに、今見てるのは『未亡人家政婦ザ・ファイナル〜最後の立ち聞き〜』。

「あー、やっぱりこの人が犯人だったね〜」
「・・・色々おかしかったからな」

外は快晴。
耳に心地よい波の音と輝く海。
まさにビーチバレーやらスイカ割り日和にはもってこいだ。
なのに男二人して別荘の一室で昼ドラ観賞。
これほど悲しい夏休みの思い出はない。

「あーあ、終わっちゃった」
「・・・昼ドラなだけにドロドロしてたな」
「それが昼ドラの売りだからね〜」

などと言いながらアーヴァインはチャンネルを回す。
しかし、どれもこれも気を引くものはなく、アーヴァインはテレビを消した。
そして再びバタリと突っ伏して深くため息をつく。
よく耳をすませば海で遊ぶ人たちの声が聞こえなくもない。
その海には愛しのセルフィや友人たちが・・・

「あ〜考えるだけで辛い!」

と、叫んで気を紛らわす為に再びテレビをつける。
もう涙目だ。

「なんで怪我とかは都合よくケアルで治るのにぎっくり腰は治らないかな〜?」
「・・・全くだ」

ヴィンセントも大好きなユフィや友人たちと海で遊べない事に嘆いているようだ。

「・・・今は耐え忍ぶしかない」
「そうだね。ていうか、もういっそのこと寝よう?寝てこの時間をやり過ごそうよ」
「・・・そうだな」

アーヴァインの意見に賛成し、ヴィンセントも寝てこの時間をやり過ごす事にした。














一方その頃、ビーチでは・・・


「アービンとヴィンセント、今頃どーしてんのやろ」
「寝てるか昼ドラ見てるかじゃない?腰痛めてるからそんなに動けないと思うけど・・・」

セルフィとユフィは波打ち際でヴィンセントとアーヴァインがいるであろう部屋を見上げる。

「ヴィンセントもアーヴァインもアタシたちの為にあんな事になっちゃって・・・」
「お礼って言うかお詫びって言うか・・・何かできひんかな〜?」
「あるっちゃあるよ」

「ホント!?」

リュックの言葉に二人は顔を輝かせて尋ねた。

「アタシたちに出来る事って何?」
「一緒にいてあげる事かな?ご飯とかどっか移動する時は支えて一緒に歩いてあげるとなおよし」
「・・・それだけ?」
「そ!それだけでも十分二人は喜ぶよ」
「ホントに〜?」
「ホントホント!このアタシを信じなさ〜い!」

大きく胸を張って言い張るリュックをユフィとセルフィは信じる事にした。

「う〜ん、じゃあそうしてみよっか」
「そやね。今日は二人のサポートしよっか」

(これで二人のぎっくり腰が一気に治るといいけど)

リュックは呑気に思うのだった。







END




―――――

『忍ぶ』なのに『(耐え)忍ぶ』になってしまった。

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