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□理解不能
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黒い太陽が世界を照らす闇の世界。
ここには闇の住人が住んでいる。
まぁ、イメージするならハロウィン的な雰囲気を纏った人々だ。

そんな世界のとある薄気味悪い森の奥に屋敷があった。
その屋敷には吸血鬼が住んでいたが、今日は来客がいた。

「ねぇねぇ、早く飲んでよ!」

黒のとんがり帽子と動きやすい黒の服(ご想像にお任せします)を着た少女の魔女が吸血鬼に迫る。
吸血鬼―――ヴィンセントは少し困ったような顔をしながらコップの中のオレンジ色の液体を見つめた。

「・・・ユフィ、これは何だ?」
「何って・・・オレンジジュースだけど?」

ユフィと呼ばれた魔女は当然と言うように答えた。
しかし、ヴィンセントはユフィの言うことを信じる事が出来なかった。
ユフィは優しくて良い子だが悪戯が大好きだ。
その諸行は数知れず。

「このアタシが信じられないの?」
「今までのお前の悪戯の数々を思い返せば半分信じられないな」
「うっ・・・!そ、そう言わずにさ、ね?ね?」

若干笑顔が引きつっているユフィが益々信じられなくなる。
しかし、ここで機嫌を損ねても後が面倒なのでとりあえずは飲むとしよう。
流石のユフィでも毒物や危険物を入れる事はあるまい。
ヴィンセントは小さく息を吐いてから“オレンジジュース”をぐいっと一気に飲んだ。

「・・・」
「どうどう?何か感じる事は?」
「甘い」
「それだけ?」
「それだけだ」

正直な感想を述べた筈だが、ユフィは不満そうな顔をしている。

「ホントに何も感じない?」
「ああ」
「・・・おっかしいな〜」

ユフィは首を傾げた。
そして懐から魔法のステッキを取り出してクルクルっと回して魔法の本を出し、ペラペラとページを捲った。

「えーっと〜・・・うん、すぐその場でだよね。材料は何度も確認したし分量とかもきっちり量ったし・・・」
「・・・ユフィ」
「うん?」

呼ばれて振り向くと、ヴィンセントが険しい顔をしてこちらを見ていた。

「私を実験台にしたのか?」
「実験台にしたっていうかなんて言うか・・・」
「何を呑ませた?」
「・・・・・・・・・ほ、惚れ薬・・・」

それを聞いた途端、ヴィンセントの表情は険しいものから鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になった。
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