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□可笑しな関係
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魔界――ヴァレンタイン邸――


「ヴィンセントー!」

優雅に本を読んでいた悪魔・ヴィンセントの元に天使・ユフィが飛んできた。
だが、ユフィの姿を見るなりヴィンセントは顔をしかめた。

「・・・ユフィ、その恰好はどうにかならないのか?」
「え?」

言われてユフィは自分の現在の恰好を見た。
露出度が高く、白い肌がほぼ剥き出しだ。
天使にしては少し慎みがない。

「どうにかって・・・どうすればいいのさ?」
「もう少し肌を隠せ」
「えー?暑いじゃん。それにこれくらいセルフィとかリュックとかもしてるし」
「そんな恰好ではいつ襲われてもおかしくないぞ」
「じゃあ、ヴィンセントに襲われる為って言ったら?」

ユフィの言葉にヴィンセントは驚きに目を見張った。
悪戯っぽくユフィは笑っているが、そこには女の色っぽさがあった。
思わず胸が高鳴るが、あえて平静を装う。

「・・・軽々しくそんな事を言うものではない」
「アタシ的には軽く言ったつもりはないんだけどなー。
 でもまぁいいや。それよりヴィンセント、ジュース飲む?」
「媚薬ジュースならいらん」
「そ、そんなもんじゃないってば!」
「なら、惚れジュースもいらん」
「そ、そんなの入ってる訳な、ない、でしょ・・・」
「だったらお前が先に飲め。そしたら私も飲むとしよう」
「・・・」

ユフィは黙って明後日の方向を向いた。
つまり、何かしらの物は入っているだろう。
先程の反応から見て惚れ薬の可能性が高い。
ユフィはそういった悪戯が大好きで、しかもそれを全部ヴィンセントだけにしかけてくる。
巧妙な悪戯をヴィンセントはギリギリで回避するが、結構満更でもないらしい。





「ホントに面白いね〜、あの二人」

ヴィンセントとユフィの様子を上空から見ていた天使のアーヴァインはセルフィに言った。
二人は遊びに来ていたのだが、ヴィンセントとユフィが二人っきりでいるのを見て、少し様子を見ていたのだ。

「ホンマにね〜。ヴィンセントは悪魔でユフィは天使。
 なのに天使のユフィが悪戯という名の作戦でヴィンセントを手に入れようとするんやもん」
「普通は逆なのにね〜」
「なんや面白い関係築いとんな〜」

二人はほのぼのとした気持ちで、引き続き二人の様子を見守るのだった。






そんな二人にユフィたちが気づいたのはもうしばらくしてからだった。














END

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