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□訪れし憧憬は希望に満ちる
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「お前・・・そんな事してたのか」
WROにて休憩時間にシャルアがヴィンセントがユフィに対してやっていた諸行を聞いた時に最初に言った言葉がこれだった。
しかし、当ののヴィンセントからは悪びれているような様子は全く見受けられない。
「なんとなく意地悪してやりたくなってな」
「今すぐコーヒーぶっかけてドロップキックかましていいか?」
「だが、ユフィは太ったと言っているがあまり変わっていないと思わないか?」
「まぁな」
「むしろ私としてはまだ痩せている方だと思うがな」
「お前ら男は痩せているよりも少しぽっちゃりしてる方がいいとかよく言うがどうしてだ?」
「理由は人によるかもしれんが私としては―――」
理由を述べようとした所でヴィンセントの携帯が着信を知らせた。
携帯を取り出してディスプレイを見てみると、そこにはユフィの名前が表示されていた。
「すまない、電話だ」
「ああ、いいぞ」
「―――ユフィか?・・・そうか。判った。ああ、判った。気をつけてな」
軽い会話を交わした後にヴィンセントは着信を切った。
「ユフィ、なんだって?」
「任務の関係で今日は帰れないそうだ」
「そうか。だったら寂しいなぁ?太らせられない上に夜も楽しめなくて」
「このくらいはよくある事だから慣れている」
などと言いつつもヴィンセントは少しだけ不服そうだ。
わざとお菓子を食べさせたり夜を楽しめない依然に今日は会えないのが不服なのだろう。
(でもまぁ、ちょっとした報いでもあるな)
そんな事を思いながらシャルアはコーヒーを飲んだ。
さて、あれから一ヶ月くらいがたった。
ヴィンセントはと言うと―――
「・・・・・・」
キノコが生えそうな勢いで落ち込んでいた。
オマケにいつかの根暗オーラも出している。
今すぐ棺桶に入ってもおかしくない雰囲気だ。
「ヴィンセントはどうしたんだ?」
「一ヶ月近くユフィと二人だけの時間を過ごせてないとか」
「当然の報いが返ってきたな」
ルーイ姉妹はココアを飲みながらわりかし冷たい視線でヴィンセントを見た。
同情なんかこれっぽっちも感じられない。