伝記
□後編
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海は案外思った以上に深かった。
海に沈められてどのくらい経ったのだろう?
六人は空気をゴボゴボと吐きながら苦しんでいた。
クラウドはティファを、アーヴァインはセルフィをしっかりと抱き締めていた。
そして、ビビの手はリュックがしっかりと握っていた。
ゴウンッと鈍い音がして六人を閉じ込めた檻はやっと海底の底についた。
海の中は暗く、魚はいなかった。
こんな所で最後を迎えてしまうのかと心の片隅で考えていたクラウドは、しかし最後までティファの側にいようと更に強くティファを抱き締めた。
意識が遠のきそうになって、苦しくないのにクラウドは気付いた。
クラウド(ああ、俺もう死ぬのか・・・)
覚悟は出来てるつもりだった。
海の中であるから届くかどうか判らないがクラウドは最後に呟いた。
クラウド「愛してるよ、ティファ」
・・・・・・
クラウド「・・・ん?」
最後の言葉が何だかクリアに聞こえてクラウドは疑問を感じた。目をぱちぱちと瞬かせ、大きく深呼吸してみる。
クラウド「・・・あれ?」
息が出来る。
目も痛くない。
もうあの世に行ったのかと思って周りを見回したが、そこは沈む最中に見た深海だった。
檻にも囲まれている。念の為に腕の中のティファを確認する。
―――ティファは居たし、足もあった。
アーヴァインとセルフィとビビとリュックも確認するが、足はあった。ついでに自分の足も確認すると・・・あった。
どうやら幽霊にはなってないらしい。
クラウド「ティファ、ティファ!」
ティファ「クラウド・・・?もうあの世に着いたの?」
クラウド「違う、ここはまだ現実の世界だ」
クラウドはティファを揺さぶって目を覚ますように促した。
ティファは恐る恐る目を開いてクラウドや辺りを見た。
ティファ「あら・・・?」
クラウド「どういうことか判らないが一応生きてるぞ」
ティファ「どういうことかしら?」
クラウド「判らない。でも、生きてるだけマシだ」
クラウドは未だもがいているアーヴァインたちを見て呼びかけた。
クラウド「アーヴァイン、セルフィ、ビビ、リュック起きろ。生きてるぞ」
セルフィ「そないなことない!アタシたちは・・・あれ?」
アーヴァイン「生きてるね?」
ビビ「でも、もしかしたら肉体は既に滅んでいて・・・」
リュック「うそ〜!!?」
クラウド「考えすぎだ」
クラウドはビビの頭をボフッと叩いた。
ティファ「ねぇ、クラウド・・・」
クラウド「何だ?」
ティファ「その・・・起きる前に言ってたこと・・・」
クラウド「え・・・」
クラウドは起きる前にティファに「愛してる」と言ったことを思い出して顔を赤くした。
クラウド「あ、あああああああああれはその・・・・・・!!!」
アーヴァイン「あ、僕もそれ聞いた」
セルフィ「アタシも」
リュック「かなり鮮明に聞こえたね」
ビビ「かなり心篭ってた」
クラウド「ばっ!それはだな・・・!!」