伝記

□地下室の闇と虚構の罪
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街から離れた所に大きな屋敷がある。
その屋敷にはモンスターが住んでいるという噂があった。
その噂を確かめる為に少女―――ユフィが治安維持団体から派遣された。

「あー、貴族の家っぽい・・・」

ユフィは屋敷の門の前で立ち尽くしながら呟いた。
大きく立派な屋敷、広い庭、なんか貴族っぽいオーラ。
これはもう、貴族の屋敷で決まりだ。
“もしも屋敷が綺麗だったら”の話だが。

「留守・・・なんて事はないよね」

先程から人らしい人は見えない。
何より、庭が荒れ放題だ。
もしも家主が旅行か何かでいなかったとしても庭師とかがちゃんと整備している筈だ。
そうなると、この屋敷は家主のいないただの廃屋かもしれない。
ユフィの気持ちが少し沈む。

「幽霊とかいたらやだなー・・・」

ユフィは幽霊が嫌いだ。加えて暗い所も。
しかし、任務で来た以上は一応捜査しなければならない。
ユフィは腹をくくって屋敷に突入する事にした。












屋敷の中は薄暗く、やや埃っぽい。
人の気配もしない。

「うぅ・・・誰か連れてくれば良かった」

しかし、今更後悔しても遅い。
この辺に生息するモンスターはそう強くはなく、例えこの屋敷に住んでいると言っても恐らく大した事はない。
そう踏んだのが間違いだった。

「まさか死亡フラグとかじゃないよね!?」

ユフィは急に青ざめて近場の部屋に駆け込んだ。
バァンと大きな音を立てて開かれた部屋は個室だった。
箪笥があってベッドがあって鏡台がある。
そして床の上にはショットガン。

「ちょっストップ!!何で床の上にショットガンがあるの!!?」

何だかもう嫌な予感しかしない。

「うわぁあああああああ!!!まだ死にたくなーーーーーーーーーーい!!!!」

ユフィは危険を感じて部屋の窓に駆け寄った。
大体こういう時の相場は窓が開かなくなり、人型の黒のシルエットが現れて殺されるのがオチだ。
そして新たな主人公が現れて自分の死体を調べて同じ目に遭いそうになるがなんとか危機を脱するという・・・。
それは嫌だった。全力で嫌だった。
だが―――

「あぁぁああっと!?」

窓はすんなり開いた。
勢い良く開けたので飛び出しそうになったが、寸での所で止まる事が出来た。

「あ、開いた?死亡フラグ回避?」

念の為に外を丹念に見回すが死亡フラグになりそうなものはない。
そうと判れば善は急げ。
ユフィはさっさと窓から抜け出そうとした。が、すぐに思いとどまった。

「もー最悪・・・」

本部に戻ったとして、何と報告すればいいのやら。
怖くて帰ってきましたなんて言える訳がない。
そんな訳で、窓が閉まらないように椅子を上手くつっかえにして捜査を再開した。
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