伝記

□地下室の闇と虚構の罪
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「ここは・・・異常なし」

扉を開けて中を軽く確認してはすぐに閉めた。
不用意に気になる物を調べてうっかり死亡フラグを踏まない為だ。
調査記録は勿論作らない。それも死亡フラグに繋がりそうだから。

「とりあえず、一階はクリアだね」

一階を一通り見回ったユフィは、念の為に脱出口に指定している部屋へ向かった。














部屋の窓は椅子でつっかえて開け放たれた状態のままだった。
しかし、違う点が二つ。
一つはショットガンが消えていること。
もう一つはベッドの垂れているシーツの下から明るい茶色の毛の塊がはみ出ていることだった。

「・・・!」

ショットガンが消えた事に驚きの声を上げそうになったが、なんとか抑える事が出来た。
少し気持ちを落ち着かせ、何か突ける物がないか辺りを見回す。
すると、机の上にボールペンがあるのに気付いてそれをそっと手に取った。
そして茶色の毛の塊を突っついた。

「わっ!」

声と共に茶色の毛の塊がシュッとベッドの下に引っ込む。
ユフィは好奇心半分でシーツを捲った。
すると、そこには明るい茶色の小さな犬とメイド服を着た人形が体を丸めて伏せていた。
しかも目が合う。

「「「あ・・・」」」

沈黙が走る。
一人と一匹と一体はしばらく見つめ合っていた。
そして沈黙を破るように犬が鳴いた。

「く、くぅ〜ん・・・」
「・・・」
「わ、わんわん・・・」
「・・・」

犬の鳴き方はぎこちなく、ほぼ棒読みだった。

「・・・人面犬?」
「いや、少なくとも顔は人間じゃないからちょっと違うかな〜?」
「そっか・・・」

再び沈黙が走る。
とりあえず、ユフィは叫ぶ事にした。

「犬が喋ったーーーーーーーーーーー!!!!!!」

犬と人形はそれを合図にするかのように、ベッドの下から慌てて出た。
そして人形は犬の背に乗り、犬は人形がしっかり乗ったのを確認して走り出した。
都合よく開いていたドアから部屋を出て行き、「見つかった〜!」と犬が叫ぶ。
ユフィはとりあえず追いかける事にした。

「待て〜〜〜〜〜!!!」

もしも先程の犬が人面犬だったら確実に逃げていたが、犬は普通の犬だった。
そんな普通の犬が喋ったので、逆に興味が湧いた。
犬だけじゃない、人形も喋ったし動いた。
呪いの人形っぽい感じだったら、これも確実に逃げていたが、そういう感じはしなかった。
益々興味が湧く。
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